第3章 『理解』
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翌日、アルがウィンリィの手伝いをするとかで余計に暇になった俺は母親の墓参りに行くことにした。
誰にも外出を悟られないように、特にヒューズにばれないように気をつけてコートを羽織り出掛けた。
町に下りて花を買い、久しぶりだな!と挨拶を交わして、母の墓へと向かった。
「ワン!」
聞きなれた犬の声がして、振り返れば感情の読めない表情をしたヒューズが遠くもなく近くもない場所に立ってこちらを見ているのが見えた。
仕方なく彼の方にゆっくりと近づけば、うっすらとほほ笑んだ。
俺が嫌な顔をしているのがわかったんだろう。
「デン君に連れて来てもらったよ。出来るなら一言欲しかった。」
「…別にてめぇに声をかける事でもないだろ。」
「だめだよ。僕は君の命を預かって来てるんだ、無下にするのは僕の軍人生命にかかわる。」
軍人生命って、お前みたいなやつがそんなものに命を掛けてる風には思えねぇけどな。
俺の足はいつの間にか、焼き払った自分の家へと向かっていた。
「家。焼け崩れているけどここに何か用事?」
「……俺の家だ。」
一番連れてきたくなかった奴を連れて来てしまった。
さっさと立ち去ろうと、踵を返して歩きだすがヒューズは動かなかった。
「ヒューズ?」
声をかけても、半ば睨みつけるように俺の家を見ているばかり。
「君は僕の事が嫌いだろ?」
「…あ?」
「君たちと違って五体満足。頼れる父親と優しい母親、可愛い可愛い妹もいる。軍人としてそれなりの地位について安定した仕事をしている。」
可愛いって二回言った。
「……別に羨ましいとは思ってねェよ。」
それはおまえの生きている道であって、俺とおまえは違う。
羨ましがったって俺はおまえにはなれない。
「僕もね。心臓から下すべてを失った事がある。本当の父親を錬成しようとしてね。」
「えっ!?」
思わず振り返った。
だが、彼は変わらずに俺の家を見つめているばかり。