第24章 『再・理解』 3
「そう思う?俺はね、見たことがあるんだ。殺しても殺しても生き返る。でも、それは嘘だ。」
「え?嘘?」
「殺し続けていればいつか死ぬ。そうして、足りなくなったものを補うために、酷い事をするんだ。」
もしかして、この人。
賢者の石の錬成の事を言っているんじゃないだろうか。
賢者の石でホムンクルスは作られている。
だから、賢者の石の中の魂がなくなればホムンクルスは死ぬ。
死なないようにするためには、補充する必要がある。
「新たな石を作る……この国を使って。」
鋭いホーエンハイムさんの視線が突き刺さった。
「ホーエンハイムさんはこの事を知ってらしたんですか?」
「もちろん。」
「……止めないといけません。こんなこと起こっていいはずがない。」
「君は俺がホムンクルスの側の人間だったらどうするつもり?」
そりゃ簡単。
殺すまでだ。
「今ここで消します。」
「…できる?」
「これでも結構腕が立つんです。」
殺気のような物は感じられないけれど、もしかしたら相手はプロかもしれない。
殺気を一切漏らさずに、こちらを攻撃してくるつもりかもしれない。
「ぷ。っはっはははは!」
思わず立ち上がってしまった。
だって、突然笑い出すんだもの。
「君、エドワードに似ている。良いよ。全部話そう。だから君の話も聞かせてくれ。」
「は、はい。」
長い長い話だった。
街から少し離れた林の中に火を焚き、顔を突き合わせた。
そろそろ薪も尽きかけている。
「信じられない話です。」
「まぁね。」
「でも、どうしてそんな重要な話を、見ず知らずの僕に話してくれたのですか?」
一番の疑問だ。
一度しか会ったことのない僕に、彼の一生を聞く資格などあっただろうか。
「俺は昔、ジプシーっていう旅の一団を率いたことがある。旅から旅への生き方なら、何年もかけて世界を一周もすれば顔見知りも少なくなってるだろう?長い月日を生きるしかない俺には好都合だった。」
ジプシー……。
確かにジプシーの歴史は古い。
嘘か本当か分からない言い伝えも多数ある。
錬金術ではなく、魔術や呪術が使えたとか、不老不死の薬が完成した。とか…。