第24章 『再・理解』 3
「あの。ここらに宿なんかありませんか?」
「ごめんなさいね、ないような物なのよ。このありさまでしょう?」
リオールについて一番。
汚れたエプロンをして大量の洗濯をしていたお母さんに訪ねてみた。
疲れてはいるが、絶望しているという様子は無い。
「食堂も……」
「えぇ。でも、分けてくれるところはあるわ。」
馬を降り、ゆっくりと市内を見回しながら先ほど教えてもらった場所まで歩く。
街はボロボロ。たくさんの人が亡くなり悲しんだ事だろう。
教えてもらった所には、お昼時でたくさんの人が集まっていた。
わいわい。と賑わう中に一人見たことのある人物を見つけた。
「あれ、ホーエンハイムさん?」
「君はたしか……?」
「一度リゼンブールでお会いしました、ビーネ・ヒューズです。」
「あぁ!」
いただいた食事をホーエンハイムさんと並んで食べる。
馬用に飼葉もいただき、馬もうれしそうだ。
「こんなところでお会いするなんて奇遇です。」
「いやぁ。本当だね。ここら辺に住んでいるのかい?」
「あ、いえ。」
そう言えば、僕はこの人に、名前しか名乗っていなかった。
「セントラルで軍人やってました。エドワード君と似たような事を。」
「軍人……どうして、旅人みたいな事を?」
話していいのか。
…カマをかけながら話すしかないだろう。
「僕、元々監査司令部って所にいたんですけど、上層部の圧力で解体されちゃって、レイブン中将って偉い人の護衛についてたんです。けど、色々あって死なせてしまったんです。」
「それで、解雇?」
「いいえ。ブリッグズの知り合いに頼んで、今は死人扱いにしてもらってます。」
「死人?どうして?そんなにまずい事だったのかい?」
嘘はついてない。
なぜ、どうして。の部分でなんとか引っかかるような言葉をだして、相手が食いついて来てくれれば、もう一歩踏み込める。
「えぇ。国を二分してしまいかねない情報も一緒に掴んでしまったので…。」
「ふぅん。」
少し、間ができた。
何か考え込んでしまったホーエンハイムさん。
どうしよう。話を続けるべきだろうか。
「ねぇ、君。ホムンクルスって信じる?俺は信じるけど。」
はへ?
「殺しても死なないなんて、君は怖いと思わないかい?」
「そ、そんな、夢のような話……ある訳ないじゃないですか…。」
攻守逆転だ。
