第23章 『再・理解』 2
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「フュリー……もちろん俺も悔しい。でも、事実なんだ。」
『そ、んな……。ご、ご家族は?』
「俺から伝えた。だから、もし会っても直接は言わないでほしい。お辛いだろうからな。」
『わかりました。……はい。』
「じゃぁ、がんばれよ。」
『……はい。』
チン!と受話器を降ろして一息つく。
暖かい部屋には似合わない、寒々しい棺桶がひとつ。
中に眠っているのは女の子のような少年。
「…いつまで見てたってそいつは起きねぇ。諦めな。」
「えぇ。わかってはいるのですが。小さい時から知っていましたから。」
「ここの寒さだと、永遠に綺麗なままだ。今にも起きそうな顔して安らかに眠れるだろうよ。」
「そうだといいですね。」
遺言で伝えられた通り、大佐たちに連絡を入れた。
家族には伝えたと言ったが、それは嘘だ。
彼の家族は複雑だし、今、伝えるべきではない。とアームストロング少将も言っておられた。
「あ、ファルマンさん。準備ができたので移送します。」
「はい。お願いします。」
彼は最後の言葉を少将だけに託して、逝った。
誰も中に入れずに話しあわれた内容は俺たちが知る由もない事だ。
でも、その密室の中で彼が自害したのは事実であり、絶対にねじ曲がる事のない真実だ。
でも、そんな終わらせ方は酷いんじゃないか?
「では、埋めるぞ。」
深く掘られた穴に棺桶は静かに沈められた。
棺桶の中にはたくさんの花が添えられ、そこには死装束を身にまとったビーネ・ヒューズが横たわっている。
「潔のいい男だった。ファルマンはこいつが幼いころからの知り合いだったそうだな。」
「はい。事情があって東部にいた時に。」
「すまなかったな。止められなかった。」
「いえ。彼が決めたことです。少将が気にする事では……。」
ヒューズ中佐には伝えていない。
家族には伝えるな。と言い残して逝ったそうだから。
でも、いずれは知ってしまう事だろう。
「エルリック兄弟とも知り合いだそうだが、伝えたのか?」
「この後行きます。」
「きっと、彼らは私を責めるだろうな。なぜ、止めなかったのか。と。」
「……。」
二人もきっと悲しむだろう。
シャベルで丁寧に土を被され、段々と見えなくなっていくビーネ君の入った棺桶。
春になれば、もうどこに彼が埋まっているのかもわからなくなる。
