第22章 『再・理解』
国家錬金術師であると公開している訳ではないので、僕には剣の帯刀が許された。安物のたやすく折れてしまいそうなものだけど。
「老いとは本当に恐ろしい物ですね。レイブン中将。貴方も昔は本気でこの国を想う、若く気高い軍人であったでしょうに。」
凛と怒りを含んだアームストロング少将の声が響く。
僕は仮にも中将の衛兵なので一応剣を抜き、二人に近づいた。
「な…何をするアームストロング!こんなっ…せっかくイスを用意してやるというのに…選ばれた人間になれるというのに!ヒューズ!ヒューズ!」
「言ったでしょう。新たなイスなど不要、と。」
呼ばれたからには間に入らない訳に行かなかったが、一般軍人のふりをして、上官に剣を向けるなど恐ろしくて震えますー。ぐらいの顔をしてみた。
「ヒュ、ヒューズ!」
「その腐りきった尻を乗せている貴様の席をとっとと開けろ、老害!!」
少将は剣を手に持っているというのに、怒りにまかせて力押し。
こりゃぁ、僕でも敵いそうにないです。
「貴様…不老不死を…捨てるというのか…目の前にある…のに……。」
ばっさりと切られた中将。
ほぼ即死であろう。
「このブリッグズの地下で文字通り礎となられるがよかろう。レイブン将軍。」
終わった。レイブン中将は死した。
ここにいる彼らの敵は僕一人。
「貴様、ヒューズと呼ばれていたがマース・ヒューズの関係者か?」
ここはまだひよ子のふりをしているべきだろうか。
「え、あ。あ。マースは父です…。」
「ふん。」
どう取ったのか判断しにくい返事。
周りのブリッグズ兵は僕を口封じのために殺すべきだと喚く。
まずい。
僕は今、ホムンクルス側の人間だ。
目の前にいるブリッグズは反ホムンクルス。
ここで抗えば僕は完全にホムンクルス側の人間となってしまうだろう。
先にアームストロング少将にヒントを渡した意味が無くなってしまう…。
「貴様はどう思う。不老不死について。」
「えっと…その。」
この中にホムンクルスのスパイがいるかもしれない。
僕は下手にこの騒動に口出しでもすれば、家族や仲間を危険にさらしてしまう。