第22章 『再・理解』
~~~~~~~~~
今日のうちにもう一度アームストロング少将に会っておきたかった。
しかし、夜も更けて来ているというのに、中央兵でレイブン中将の護衛でしかない僕が夜中にまでうろうろしていたら怪しまれる。
割り当てられた仮眠室のベッドにもぐりこみ、隣のベッドにいる二人の護衛たちのくだらない会話を子守唄に眠りについた。
次の日。
朝から中将に好きにしていていいと暇な命令を下され、時間を持て余してしまった。
毎日毎日エドとアルの所に行く訳にもいかず、今日は一日ファルマンさんでも探すとしようと決めた。
しかし、探せど探せど、このブリッグズ砦は広くみつからない。
諦めかけた頃、あの大きな穴のあいた広い空間に中将と少将の姿を見つけた。
見て見ぬふりも出来ずに、衛の者らしくレイブン中将に近づき、さりげなくはりついてみた。
「ヒューズ。随分仕事熱心だそうだな。」
「はい。」
もう、余計な事は言わなかった。
中将と少将の会話は最初は当たり障りにない話だった。
もしかしたら僕という余計なものがいたからかもしれない。
しばらくしたら、離れているようにと中将から命が下った。
「この計画はいつから?」
大きな機械の動く音や穴を塞ぐ作業員たちの声、シャベルがコンクリを擦る音。
それらにようやく慣れてきた頃、音に紛れて微かに二人の声が聞こえてくるようになった。
「この国ができた時からだと聞いている。」
「それはそれはなんと壮大な。」
「うむ。やっとだ。」
やはり少将はあちら側に付いてしまったのだろうか。
「今、私の代で計画を完成させるのだ。スロウスに休んでもらうヒマは無い。」
スロウス……ここにいるとエドが言ったホムンクルスの事だろうか。
「ご協力感謝するよ。アームストロング少将。上に…」
ううん。聞き取れない。
ん?
「私のために新たなイスを用意していただかなくとも結構。」
「なに?」
一瞬。
一瞬だった。
少将が中将に牙をむいた。
少将が抜いた剣は真っ直ぐに中将の腕を貫いた。
とっさの事で動く事ができなかった。
「スミスの腕は左でしたか?右でしたか?」
コレ。一応僕は少将に剣を抜いたらいいのでしょうか?