第22章 『再・理解』
「君たちと似たようなものだ。ただ、自由に動けない。今はレイブン中将の護衛でここにきている。で、なにがあった?」
「ここにホムンクルスがいる。地下に…この国の地下に円形に穴が掘られている。奴らの次の目的はたぶん、ここだ。」
「地下に穴?」
何のために?とビーネが眉をひそめた。
ただ、説明している暇はなさそうなので、事実だけを伝えるしかない。
「大きな戦争が鍵だ。後は自分で調べやがれ。」
「随分な言いぐさ。」
こいつはレイブン中将の下にいると言った。
どう見たって大総統に、ホムンクルスにがっちりと手綱を握られているように見える。
もしかしたら、一瞬の隙を見てここに来てくれたのかもしれない。
「あとな。前にお前が倒れる前に話してた事だけど、錬丹術が鍵かもしれねぇんだ。」
「錬丹術…うん。わかったよ。」
もう大丈夫だろう。
きっと、ビーネが欲しがっていた情報は全部伝わったんだろう。
「………。」
けど、ここから一歩も動こうとせず、視線を巡らせるビーネ。
不思議に思ったアルが声をかけた。
「ビーネ?」
「アル……エド。僕はもしかしたら、情報を集めるだけ集められても何もできないかもしれない。」
自分の靴を見つめて、ぼそりと呟いた。
「一緒に、進めないかもしれない。」
弱音。弱音とはちがう。
用意周到で石橋を叩いて渡るようなこいつが、初めて目の前の橋が無くなったんだ。
「大丈夫だよビーネ。ボクたちがいる。なにが起ころうとボクたちが全力で止めて見せる。」
「アル……。」
「ビーネはビーネにできることをしてよ。ボクらはボクらの方法で進むから。」
「…そうだね。君たちは今までもそうやって進んで来たんだ。僕も僕にできることを精いっぱいやって見るよ。」
まだ少し、困惑の混じった笑顔をアルに向けていた。
俺の知る限りこいつの戦闘力はずば抜けている。
軍人としても錬金術師としても。
しかし、これから血なまぐさい事が確実に起こり得ると確信しているのに、こいつほどの力が敵にわたってしまうと考えると悪寒が走る。