第22章 『再・理解』
「……飢えて死んでしまっているのではないかと心を痛めていました。一目、一目でいいのです。合わせてはいただけないでしょうか!」
まさかこんなところで幻聴を聞く羽目になるとは。
もしかして、あいつがあのまま目を覚まさず、何か科学的根拠のない物があいつの声をここまで運んで来たのではないか?
「兄さん、この声。ビーネだよね?」
「……。」
そうだ。どう考えてもあいつの声だ。
何やら生き生きしている。
けして死人の声なんかじゃない。
いつもの、楽しんで人を小馬鹿にする時の声だ。
「聞いた事がある声だな!おい!コラ!」
こちとら大変なんだぞ!
姿を見せたビーネは相変わらず、品の良さそうな顔をして現役を退いてはいなさそうだった。
「てんめぇ!ノコノコとこんなところでなにやってるんだ!あぁん!?」
「に、兄さんやめなよ!」
大佐もみんなも大変なんだぞ!
俺たちの立場だって危うい!
それなのにどうしてこんなところに来ているんだ!
「久しぶりにあったけど、変わってなさそうだね。」
落ち着いたようなホッとしたような表情で笑いかけてくるビーネはやはりいつものビーネだった。
「おい、エルリック。本当にコイツいとこか?」
「ばっきゃろう!こんな猫の皮かぶったやついとこなもんか。」
「いとこではないけど、君たちの事を心配してたのは本当だよ。ねぇ、エド、アル。ここで何があったか教えてくれない?」
珍しく、少し強引にぐい、と前に出てきた。
衛兵さんは嘘をついてここに入りこんだビーネを捕まえ今にも追い出しそうだった。
「そいつ俺のいとこじゃないけど、仲間だ。」
何度か確認のため軍人さんと話をして、ようやく落ち着いた。
「アル。平気かい?」
「うん。大丈夫だよ。ビーネは?腕はもう大丈夫なの?」
「見ての通り元通りさ。」
エドは?とようやく俺の方に話を振ってきた。
「別に。お前、ここでなにしてるんだ。飛ばされた?」
「リザさんと一緒。大総統府に飛ばされた。……言ってる意味わかる?」
『大総統府』という事はビーネたち監査も大佐たちのようにされたってことか。
きっと、ビーネも何かしらの人質を取られているんだろう。
「あぁ。」
短く返事をすれば、嬉しそうに笑った。