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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第21章 『停滞』   4




数日後、無事に退院となった僕は早速大総統の前に立たされていた。
側近の気難しそうなおっさんのご丁寧なご説明など、僕の耳には入ってこなかった。
最初からひょろひょろで小童の僕のことなんてゴミクズだとしか思ってなさそうな目だったから。
でも、僕の適当な態度に厳しい目を向けてくる人が一人、…リザさんだった。

「リザさん仕事熱心すぎませんか?」
「いくら軽んじられていても、一応上司なのよ。」
「うーん……以後、気を付けます。」

それからはもう、僕はぴったりと大総統の行くとこ行くとこについて行かされた。
あっちへふらふらこっちへふらふら。
一応衛兵たちの間で戦闘訓練もあるが、僕には子供のごっこ遊びにしか見えなくて欠伸が出た。

「ヒューズ!真面目にやれ!」
「はぁい。」

なぜだかリザさんがいるときは放任してくれるのだが、リザさんがいない時は厳しくご指導なさってくれる。

「敵は容赦なく殺そうとしてくるぞ!オラ!本気でやってみろ!」

僕の前には剣先付きのライフル銃を持った教官。
さすがに持ち慣れているし使いなれている……先についているのが真剣なのは万が一僕が怪我をして離脱しないものかと思っているのかもしれない。

「はい。」
「しゃきっと声だせ!」
「はい!」

はいはい。
相手は武器持ち。こちらは丸腰。
……僕が実は国家錬金術師だと知っているのは大総統と元東部の人たちぐらいなのかな?
すんごい余裕ぶった顔してる。

「さっさとこい!敵は容赦ないぞ!」
「教官!これは実践だと思ってやるものですか?加減は必要ですか?」
「ふん!必要ない!お前みたいなひよっこに加減出来んかもしれないがな!」

ひよ子じゃないっす。出来れば子犬ちゃんとか子猫ちゃんとか言って見て欲しかった。
……だた、あのごつい教官から「子猫ちゃん」なんて可愛い単語が出てくるのが面白そうだから。

「じゃぁ、本気で行きます。」

むしろ乱闘でもかまいませんよ。
右腕が完治してからの初の訓練。
感覚が戻っているのかと、なまった体をどうにかしよう。
ぐ。とライフルを腹のあたりで構えてこちらに突進してくる。
うおぉぉお!と唸っているのは威嚇しているのだろう。



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