第3章 『理解』
列車に揺られようやくエルリック兄弟の故郷とやらに着いたのは夕食の時間だった。
気持ちのいい自然。
「なんだか、昔を思い出すなぁ」
「昔?おまえずっと中央じゃなかったのか?」
「え?あぁ、まぁね。」
一応言葉を濁してはみたが、エドワード君の事だからきっと何かに感づいただろう。
見渡す限り美しい草原の一本道を歩いた先に家が一軒。
知った顔の来訪に番犬であろう犬が嬉しそうに駆け寄ってきた。
「よぅ、ピナコばっちゃん、また頼むよ。」
家の前には煙管をくわえた背丈の小さなおばあさん。
ぺこり。と小さく頭を下げて会釈する。
「こっちはビーネ・ヒューズ。」
「ピナコ・ロックベルだよ。よろしく。」
「こらー!エド!」
ピナコさんと握手を交わしていると、横からひゅるると何かが飛んできて、がぃん!と音を立ててエドワード君の頭を直撃していた。
「ごふっ!」
「メンテナンスに来る時は先に電話の一本でも入れるように言ってあるでしょー!」
女の子の声が聞こえる方に視線を向けると、金髪の長い髪を一つにまとめている、そう歳の変わらない子がいた。
「てめーウィンリィ!殺す気か!」
「あはは!お帰り!」
「…おぅ!」
正直。エドワード君の足元に落ちているスパナを見て、引いた。
……エルリック兄弟は随分と殺伐とした環境で幼少期を過ごしたんだな。
「ヒューズ。てめぇ随分失礼な事考えてねぇか?」
「え?い、いや…。」