第2章 『出会い』 2
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賢者の石が目の前にあった。
身体を失ったエルリック兄弟にとっては、身体を取り戻せる希望。
「……僕は欲しいとは思わねぇな。」
しばらくぼーっとしていると、落胆した表情のエドワード君とアルフォンス君が家から出て来た。
「おー……で?」
「……見せてもらえなかった。」
そっか。
まぁ、そうだろうな。
マルコーさんの発言から、大方賢者の石の作り方には見当はついてる。
それはやすやすと人に教えていいレシピじゃないはずだ。
「エドワード君。石は目の前にあったんだ。力ずくっていう手もあったんじゃ?」
「だけどよ、マルコーさんの家に行く途中で会った人達の事を思いだしたらさ…、この町の人達の支えを奪ってまで元の身体に戻っても後味悪いだけだなーって……。」
彼の家への道のりを町の人に聞いてようやくたどり着いたんだ。
それまでにあった人たちはみんな「マウロ」の事を尊敬していた。
「あ―――――。」
「はは。のどから手が出るほど欲しかったって顔だね。」
「そうにきまってんだろ!」
けれどエドワード君の顔は何処か清々しかった。
「あんたは?行方不明だった人物が見つかったんだ。…裁くのか?」
「いいや。あれは人違いだ。マウロさんはきっと君の腕を見て同情したから〝アレ″の事を話してくれたんだ。」
そうだろ?と少し意地の悪い顔で笑って見せれば、エドワード君もアルフォンス君も少し笑顔になった。
「あー。また振り出しかぁ、道は長いよまったく。」
「君たち!」
「マルコーさん?」
慌てて走ってきたマルコーさん。
くしゃりと手に持っていた紙をエドワード君の手に押し込む。
「…私の研究資料が隠してある場所だ。真実を知っても後悔しないというならこれを見なさい。」
「これ……」
「そして、君ならば真実の奥のさらなる真実に…、いや、これは余計だな…」
言葉を濁したマルコーさん。
その先の何かに感づいているようだったが、深く探ろうとは思わなかった。
マルコーさんがそれを託したのはエドワード君だから。
「君たちが元の身体に戻れる日が来るのを祈っておるよ。」
慌てて身を隠すように去っていくマルコーさん。
エルリック兄弟は慌てて頭を下げていた。
「二人とも駅へ急ごう。次の列車までもう少しだよ。」
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