第21章 『停滞』 4
あの日のあの時の無理した外出が思ったより効いたらしい。
最後にエドワードと会ったのは何日前だっただろう。
「失礼します。」
右腕のリハビリは順調。
体調も万全。そろそろ退院だろう。
「あれ?リザさん?非番ですか?」
「制服を着たまま?」
「…ですよね。」
確かリザさんは大総統の所に配属されたはず。
どうして、僕の所なんかに?
そういえば…ここ数日、監査からの報告も司令からのお叱りも来ない。
「体調はどう?とかゆっくり話をしたいところなんだけど。」
がさがさと手に持っていた茶封筒から一枚の紙を取り出し、僕の方へ神妙な顔で差し出した。
受け取って目を通す前に、リザさんがベッドサイドのイスに座って口を開いた。
「解体だそうよ。」
「解体?」
「監査司令部よ。献金、裏金、不正。その他もろもろね。」
慌てて手元の紙に視線を落とす。
つらつらと色々な事が書かれていたが、僕の目に強く焼き付いたのは、
「これによって、司令部は解体とす。」
確かに…ロイ達、元東方司令部の人たちをバラバラにしたのに、一番の危険因子になりかねない監査司令部が無事な訳ないとは思っていた。
でも。それでも。
僕らの司令は、優秀だ。
「一枚上手。と言うよりは、ようやく。って感じだったわ。」
リザさんの言葉には、多勢に無勢でよくここまで残っていた。と。
「もう一枚あるわ。」
はい。と渡された紙には人事部と書かれていた。
みんなの移動先や処遇が書かれていた。
ほとんどの仲間は戦線の西や南に配置されている。
そして、監査司令部唯一の国家錬金術師である僕。
「護衛?」
「えぇ。」
暇をもてあまし過ぎていた入院生活で頭の動きが鈍っている。
しかし、紙に書かれた「大総統衛配属」の文字を見て、ノロノロと怠惰に回転していた脳みそが急に高速回転し始めた。