第20章 『停滞』 3
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奴を背中に乗せて一番に思った事。
重い。
細いくせして重たい。
「お前知ってるか?昨日の昼間、錬金術がつかえなかった時間があるって。」
たぶん知っていると思うけど、病院までの道のりの議題としてあげて見た。
錬金術師として有意義な討論ができると思っていたが、違った事で俺の胸は高鳴った。
「いや?……え、使えなかった?」
え?知らない?
まさか!あの天下の監査のエース様が知らない!?
「へぇ。お前らでも集めきれない情報ってあるんだな!」
いつものお返しだ。
「昨日の昼間……お父様の所に君たちがいた頃だろう?その時、アルフォンスはお父様に再生してもらっていたはずだ。」
「その後だ。」
「スカーと錬丹術の少女が合流して、君たち二人はホムンクルスのエンヴィーに捕まった。少女はアルフォンスの腹の中に。スカーは逃げ延びた。」
「ちょうどその間だ。戦ってる最中だよ。」
情報を握る。と言う感覚はこう言う事なんだろう。
なんとも気持ちが良くて、悦に浸る思い!!!
「へぇ……くわしく聞かせてくれる?」
首筋に悪寒が走った。
病院につくまで、背中の方から異常なまでの威圧感を感じながら、「お父様」の所で何があったのかを詳しく話した。
病室につくとベッドに腰掛け二人で熟考していた。
「わからん。」
「だろ?なのにスカーや豆女は使えていたんだ。」
錬金術が使えない。
なのに、スカーの分解の錬金術と、豆女の錬丹術は使えていた。
同時刻。
地上の他の錬金術師も錬金術を使えていなかったという。
「まぁ。今、軍部の中は完全にキングブラットレイ大総統……ホムンクルスに支配されてるし、君たちもがっちり首輪を付けられたし。」
「……お前ら監査だろ?なんとかできねぇのか?」
「あのねぇ。こちとら鉄壁の盾をいとも簡単に破られててんてこ舞いなんだよ?他に残った僕ら手駒のほとんどは盾のできない矛ばかりなんだよ。」
諦めたような力の抜けた様子でベッドに潜りこむビーネ。
もっとこの話題に食いつくと思ったんだけどな。
「少しは自分たちの事に集中してみたら?僕も君たちの研究成果には期待しているから。」
俺に背を向けてふぅと息をついて身体から力を抜く。
「なぁ、ビーネ。」
「なに?」