第20章 『停滞』 3
病み上がりも病み上がりの人間をこき使うなんて無慈悲だ。
一般の病棟にいればきっと医者が部屋から出るなと強く言っていたに違いない。
木陰に腰を降ろし、ぼーっとエドワードの仕事っぷりを見つめる。
そこらを直し終えるとホットドックを2本手にしてこちらに戻ってきた。
「お前、大丈夫か?」
そう言いながらエドワードは一本こちらに寄こしてくれた。
「いや、平気さ。」
「そうは見えねぇけどな。なんで無理して仕事してるんだよ。」
「休んでいる暇がないからだよ。君も解ってるだろ?こうしている間にも彼らの目的とやらが何かを滅ぼさんとして動いているかもしれない。」
そうだけどよ。と言いながら僕の隣に腰を降ろして空を見上げる。
今日は快晴だ。
「気持ち悪いんだよ。すっきりしないというか。ハッキリしないまま影を追い続けるのは、きもちわるい。」
「そりゃぁ…俺だってそうだけど。急いだってしょうがねーだろ。」
「わかってはいるんだけどね。手負いの僕でもできる事やりたいんだ。」
病院を出てくる前に軍服を肩にかけて父のもとを訪ねてきた。
「仕事馬鹿。」と言われたが、前とは少し違う感情でその言葉を心に仕舞う事が出来た。
「で。今日のお前の仕事は俺の監視か?それともサボリか?」
「前者。」
ゆっくりと流れていく雲を会話も無しに見つめる。
今、この時だけ止まってしまっているような感覚。