第20章 『停滞』 3
「リン?グリードって呼んだ方がいいのかな?ホムンクルスさん。」
僕の言葉に固まる三人。
たしかに。
僕はエドワードたちと離ればなれになったのはホムンクルス捕獲作戦の最中。
だから、リンとエドが上手い事ホムンクルスのグラトニーを捕まえたことも、エド、リン、エンヴィーとかいうホムンクルスがグラトニーに喰われた事も、地下で『お父様』という人物に会った事も、スカーと共闘した事も、もちろんリンがグリードを注ぎこまれて、中身が入れ替わってしまった事も知らなくて当然なのだ。
「な、んだこいつ。超能力者か?それとも、俺たちの仲間か?」
微妙な違和感。
エドとアルは先ほどロイに吹き込まれた嘘を信じきっているのか、二人視線を合わせて頷いている。
「どちらでもないよ。」
そう言いながら、リン、グリードを観察する。
見た目は完全にリンだ。でも、雰囲気はグリード。見ていて気持ちのいい物ではない。
「僕はエドワード君とアルフォンス君の友達で。君の…うんと、リンの知り合い。そして、ちょっと耳の早い軍人かな?」
にこにこと笑いながらそう教えると、やはりそこはグリード。
「良くわかんねぇけど。率直に敵か?味方か?」
「今はどちらにつくか考えあぐねてる所。でも、二人に手を出すって言うなら、敵。」
「……ふぅん。」
そして、興味がなさそうに僕から視線を外し、そうだ。と懐から一枚の布切れを取り出す。
「リン、つったっけ?お前らのダチに頼まれてよ。」
「…なんて書いてあるんだ?」
「知らん、読めん。だが、こいつを待ってる女に渡してくれとよ。」
布にはシン国の字で『我得倒賢者之石』と書かれている。
エドワードの手元をアルと僕も覗きこむ。
「…どこにいるのかしらねーよ。」
「渡してくれって。」
「渡しに行ったら、後を付けてその女を殺すんじゃないのか?」
「ンなセコイまねするかよ。それに、女と戦う趣味はねぇ。」
「……。」
「俺はウソをつかねぇのを信条にしてる。じゃぁな、たのんだぞ。」
「……。おい、リン!」
「グリードだ。」
背を向けひらひらとこちらに向かって手を振るグリード。
リンに頼まれた。といっていた。
持ち合せの情報に注釈を付ける必要があるみたいだな。
「エド。少し話があるんだけど。そのメモ、アルフォンスにお願いしてもいいかな?」
「う、うん。わかった。」