第19章 『停滞』 2
「まぁ、あれだな…。」
「とりあえず。」
あぶなかった!!!!
襲ってくる安堵と震え。
そして、パンツの違和感。
「アル!大佐!俺、トイレに行きたい!」
「がまん、してたのか?」
「いいから早く!」
大佐の案内で一番近いトイレに駆け込む。
個室に飛び込み鍵を掛ける。
「なんだ、兄さん。そっち?」
「うるせぇ!」
慌ててベルトをはずし、パンツも一緒に降ろす。
お尻の違和感の正体は、一枚のメモ紙。
『無事で何より。ビーネ。』
よく見て見れば、メモ紙は錬金術でトランクスの布地にくっつけられている。
あの一瞬でくっつけたのか?
いや…これ、俺のパンツじゃない。
すり替えたのか。
だとしたら、俺のパンツはどこに?
「鋼の。」
「にいさーん。おなかでも痛いの?」
二人の声に慌ててパンツからメモ紙を引っぺがし、ズボンをはき直す。
わざとらしく水も流して、個室からでる。
「お待たせ。」
廊下に出て、ポケットの中に突っ込んだビーネからのメモ紙を握りしめる。
「なんだ、鋼の。にやついてるぞ。」
「あぁ?にやついてねぇーよ。」
「まぁ、大方。ハニーから何かしらもらったのだろうな。」
図星過ぎてちょっと焦ったが、ハニー、ビーネの名前が出て先ほどの事を思い出した。
「なぁ大佐。監査司令部ってそんなに偉い部署なのか?」
大佐は俺の質問に、さっきの事とビーネの事とを合い混ぜた質問だとすぐ理解してくれた。
「一言でいえば、猛獣だな。」
話は廊下を歩きながらだ。と言わんばかりに先を歩きだした。
「他の仲間とあった事があるのか?」
「何度か。」
「奴らは……情報と言う情報をまるでその場で見ていたかのように把握している。だからきっと、今回の『賢者の石』を廻った騒動も逐一把握してる事だろう。」