第19章 『停滞』 2
「立派な機械鎧も見れた事だし。貸しもできたし、戻ろうかフーバー。」
「はい。副司令。」
くるり。と踵を返して偉そうにシャワー室を出て行ったビーネ。
「……。」
「……兄さん。とりあえず、服着たら?」
「お、おう。」
今は、下手に動かない方がいい。っていうビーネからの警告なのだろうか。
けれど、大量に失血してからまだ2日も経ってないのに顔色も良くて安心した。
無理している風には見えなかったけど、あいつの事だ無理を押してここまで来たのかもしれない。
今、俺達は長い廊下を憲兵…エンヴィーに案内されながら歩いて行く。
「とりあえず、どーすんだよその豆女。」
アルフォンスの鎧の腹へと視線を向け小さな声で話しかける。
「どーするもこーするも、ケガしてるから医者に見せないと…」
「どこに連れてく?」
「ノックス先生の所?」
「迷惑掛かんないようにしなきゃな。」
気がつけば俺たちの前には扉。
エンヴィーがくるりとこちらを向いて、扉を示す。
「お前たちの事は、あとはラースに任せてある。入んな。」
妙にゆっくり開いた気がする扉。
そこにはテーブルと湯気の立つ紅茶、そして…。
「大佐!」
「やぁ。鋼の。」
ほんとに、大佐だ。
「座りたまえ。」
大佐の声ではない声が響いて、ようやくこの部屋に大総統がいることを認識した。
「…なにがあった?」
「色々あったぞ。天こ盛りだ。フュリー総長は南、ファルマン准尉は北、ブレダ少尉は西へ飛ばされた。ホークアイ中尉は大総統付き補佐だそうだ。」
「なんだそりゃ!」
そんなもの、体のいい人質じゃねぇか!
「上層部の「一部」どころではなかった。「全て」真っ黒だ。」
アルフォンスと共にイスに座る。
…お尻の違和感、気になる。