第18章 『停滞』
部屋に入ってようやく自分のベッドに横になった時にはどっと疲れが襲って来た。
「お疲れっすね。お茶買ってきます。」
「いや、お前もいろ。アレイ。」
仏頂面のヴィンズと困り顔のアレイ。
すると、ヴィンズがアレイの持っていたトランクから、ノートを一冊取り出した。
「ビーネ。お前の植物研究のノート。デスクに置きっぱなしだったそうだ。」
ヴィンズが手にしているのは、仕事がたまりにたまっていたあの数日、空いた時間で作っていた植物研究ノート。
「あぁ、良かった。ガーデニング用に必要だったんです。ありがとう。」
「それだけだ。帰るぞ、アレイ。」
「え?あ、はい。」
ひらひらと手を振ってそそくさと帰って言った二人。
私服でここへ来るあたり、彼らも何か制約を受けたのだろうか。
ヴィンズから受け取ったノート。植物研究もとい賢者の石にかかわる情報を詰め込んだノートには、土の成分や水の比率など、細かい畑仕事について書かれている。
ぱらぱら、と捲っていくと僕が書いた次のページに、几帳面なヴィンズの文字でメモが殴り書きされていた。
『東はライラック。 気にならない程度に
朝日、アキレアの花は、スカシユリに養分を取られるから気をつけろ。
メインはやはりスカシユリだろう。
アキノキリンソウは嘘をつかん。植えるべき。
お前のお気に入りのミソハギとアメジストセージ、スカシユリと相性が悪い。
今時期はアキレアだ。』
これは、錬金術師の秘密のノートを真似たのだろう。
このノートの流れでは不自然ではないものの、このメモだけだと何かの暗号なのはバレバレだろう。
しかし、ヴィンズの苦労はちゃんと伝わった。
『シンの者たちは敵ではない。
東部の内乱を起こしたのは人造人間。
大総統は人造人間の仲間である可能性が高い、注意せよ。
今、鋼と焔が人造人間と戦闘中。』
と言ったところだろう。
さすがは監査の情報網と言ったところか。
みんながいればガーデニングもはかどるってもんだな!
「あ~ぁ。早く退院できないかなぁ。」
・・・