第18章 『停滞』
和やかな雰囲気を切り裂くように、ノックの音が響き返事をする前に誰かが入ってきた。
「やぁ!ヒューズ中佐!意識が戻ったようでなによりだ。」
「「だ、大総統!?」」
なぜここに!?
「ヒューズ少佐も大した怪我でなくてなにより。」
「はぁ。どうもありがとうございます。」
「急な見舞いで悪いが、君たち。友人の命と大切な家族を守りたいなら一つ、約束をしてもらわねばならん。」
約束?
「『賢者の石』それらに関する物事、他言無用。関わる事は許さん。それに、ヒューズ少佐。このファイルはわしが預かる。これも、文句は言わせんぞ。」
「あ。………ハイ。」
「はっはっは。素直でよろしい!では!わしはこれから、やらねばならないことがたくさんある。」
はぁ…。
「体は大事にしたまえ!わっはっはっは!」
今回も、窓から出て行った。
前回、エドワードのお見舞いに来たと言って、賢者の石の事を探るなと言った時と一緒だ。
「牽制、か。」
父さんも僕も、パニックになる事は無かった。
「おい、ビーネ。俺はもう何も話さん。命が惜しいからな。だから、お前の話も聞かないことにする。」
そして、僕より冷静だった父さんに少し驚いた。
「あーうん。そうだね。」
口ではそう言ったものの、心の中では頷けなかった。
興奮気味で母さん達の所へ戻り、エリシアを膝に乗せて自分の病室へ戻った。
「あら?軍人さんたち居なくなったわね。」
母さんの言葉に顔をあげて自分の部屋の周りを確認する。
本当に、何処にも気配がない。
そのかわりに、私服姿のヴィンズとアレイが部屋の前で待っていた。
「あ、母さん。ここでいいよ。友人が来てるから。」
「そう。わかったわ。」
エリシアと母さんはまた来るね。と手を振って楽しそうに病院を後にして行った。
「ビーネ。元気そうで何よりだな。」
「お見舞いですか。ありがとう、ヴィンズ、アレイ。」
「部屋、入りましょうか。」