第18章 『停滞』
「黙れよバカ親父っ!!」
狭い病室に僕の声がいっぱいに響く。
「今考えてんだ!どうすりゃいいか考えてんだよっ!少し黙ってろよっ!こっちだっていっぱいいっぱいなんだよ!そんなに死にたかったんなら、何で生きてんだよ!どうして、母さんとエリシアに会ったりしたんだよっ…バカヤロ…。」
ガキみたいに涙がいっぱい溢れて来て、ぽたぽたと床に落ちた。
「ビーネ。悪かった、入ってこい。」
あぁ、いつもの父さんの声だ。
もう、カーテンを握る手は震えていなかった。
涙でぐちゃぐちゃになっているだろう顔のまま、カーテンの中へと入る。
「大丈夫だ、父さんちゃんと生きてるから。」
「う…うぅ…うわぁぁぁん。」
父さんの胸の上で、子供みたいに泣きじゃくった。
背中を撫でてくれる腕は無かったけど、「よしよし」と聞こえてくる声が、背中に当たる。
「ほら、そろそろ泣きやめ。男だろ?」
ぐず。と鼻水をすすり、入院服で涙を拭った。
「悪かったな。脅かして。」
「……いや。」
「俺と中将を襲った奴が、姿形を変える奴でな。本当にビーネか試させてもらったよ。…悪かったな。」
「いや、いいよ。」
エリシアが父さんのひげが、と言っていたが、きちんと整えられていてサッパリとしている。
顔色もよさそうだし、声も元気そうだ。
「はぁ―――――。マジで、一発ぶん殴ってもいい?」
「えっ!お前、抵抗も出来ない病人に向かって暴力かっ!」
「元気になったら殴ってやる。僕も右がつかえないからね。」
ベッド脇のイスに座って、吊られた右腕を示す。
「どうした?」
「スカーにやられた。問題ない、治れば使える。」
「お前も無茶するなぁ。」