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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第18章 『停滞』



「こら、エリシア。お兄ちゃんイタイイタイだから。」
「はぁーい。」
「偉いね、エリシア。」

ベッドに腰を掛けるエリシア、久しぶりに見るエリシアは少し成長しているように見えた。

「ねー、兄ちゃん。パパには会った?」
「いいや?忙しくてねー。」
「パパねーおひげが伸びたって、文句言ってたー。」
「え?」

文句を言うってことは意識が戻ったんだろうか。
母さんに視線を向けると、どちらともつかない顔をされた。

「そうね、今度お父さんに会って来て頂戴。ビーネが話を聞いた方がよさそうなの。」
「うん。わかった。」
「男同士のはなしー?」
「えぇ、そうよ。男同士のおはなし。」

にこにこと笑顔を振りまくエリシア。
彼女だけが僕ら家族の心の支えだ。

「兄ちゃん男なの?」
「……まぁ、女じゃないよ。」
「えー。」
「えーって。あのねぇエリシア…。」

くすくすと笑う母さん。
不意にじんわりと涙がこみ上げてくる。

「どっか痛いの?」
「ううん。心が暖かくて涙が出るんだ。」

エリシアが、自分の肩にかけていた小さなポーチからハンカチを渡してくれた。
痛い痛いのとんでけー!と元気のいい様子は、本当に可愛いと思う。

「ありがとう、エリシア。」
「どういたしまして!」

えへへー。と笑うエリシアの向こうに居る母さんに、車いすを持って来て欲しいと頼んだ。
しかし、母さんが車いすを持って部屋に入ってくると、扉の前に居た衛兵も一緒に入ってきた。

「ヒューズ少佐。どちらへ。」
「父の見舞いに。衛はいりません。こんなガキを守っててもしょうがないですよ。」
「わかりました、部屋でお待ちしています。」

……どーも。
車いすに乗り込み、エリシアを膝に乗せ、母さんが車いすを押してくれる。

「護衛だなんて物騒ね。」
「ホントだよ。ねー、エリシア。」
「ねー!」

スカーが逃げたのだろうか。
それにしても護衛だなんて…。
あれは大総統府から派遣されたのだろうか、胸章がそれだった。
大総統がご命令されたのだろうか。
なぜ?


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