第18章 『停滞』
ふ。と目を開けた。
目を開けたと分かったのは、目の前に看護師さんがいたからだ。
「ヒューズさん。分かりますか?」
分かる?
何がだ。
「なんにも。」
「ビーネ!」
「母さん。」
泣いてたのかな。
目が赤いよ。
「良かった。」
僕の右側には窓。
左側に母さんと看護師さん。
そうだ、スカーに腕をばっきばきにやられて、骨が飛び出してて、血が止まらなくて、貧血でぶっ倒れたんだったな。
「母さん。」
「いつか、いつかこうなるんじゃないかって心配だったわ。」
「…ごめん。」
右腕は麻酔が効いているのか感覚が無い。
何日こうしていたのだろうか、エドワードやアルフォンスは無事だろうか、ロイは、リザさんは、リンは……父さんは?
「母さん、もう、平気だよ。」
「まだ、駄目よ。輸血しか終わってないもの。腕の方は大きな骨折は一か所、でも、腱や筋が断裂しているって。」
「そっか。でも、身体は大丈夫だ。エリシアは?」
「今、連れてくるわね。」
ベッドを囲っているカーテンから母さんの背中が出ていく。
良かった、腕、まだ使える。
左腕で体を起こし、エリシアが走ってくる音を待つ。
すぐにぱたぱたと可愛らしい音が聞こえて、ザバッ!とカーテンが開けられた。
「兄ちゃん!」
飛びついてくるエリシアを左腕で抱き抱え、元の位置に戻りつつあるカーテンの向こうを盗み見る。
「よぉ、エリシア。ごめんな、兄ちゃん転んじゃってさ。」
「兄ちゃん、ドジー!」
「こら、大きな声で言うなよ。」
警備が二人。
知ってる顔じゃなかった。
どこの奴だろうか。