第17章 『再構築』 4
ボクの声にハンガーにコートを掛けていたビーネが振り返る。
たしかに、ボクにとっても兄さんは憧れだ、でもビーネだってカッコいいと思う。
中央を離れていた時に何かあったに違いない。
けれど、兄さんもビーネも教えてくれるつもりはないんだろう。
「アル達のお父さんに僕も会った。エドのように髪を伸ばしていたよ。お父さんにそれをからかわれて、エドは拗ねてた。」
「じゃぁ、家を出て行った時と同じだったんだ…。」
「無意識だと思うけど、自分が父親と同じ容姿になる事で、アルフォンスを守ろうともしてたのかもね。立派だよ、君の兄は。」
明かりを消して、ビーネがベッドに潜る音が聞こえた。
ボクはいつものように一人で夜を過ごす。
でも、もうあまり寂しいとは思わなくなった。
「あぁ、わかった。僕はエドワードに理想の父親像を重ねていたのかもしれないな。ははは。とんだファザコンだったってことだ。」
「それなら、ボクもかもしれない。……ふふっ、こんなこと兄さんが知ったら、きっと怒る。」
「うん、怒るね。僕らだけの秘密だ。」
「うん。」
じゃ、おやすみ。と眠る体制に入ったビーネ。
ボクは二人の睡眠を邪魔しないように、静かに目を閉じた。
ビーネは父親を人体錬成した。
失った父親からの愛情を取り戻そうとしたんだ。
次に父親になったヒューズ中佐は、ホムンクルスにやられて意識不明。
きっと、彼は愛情に飢えてるんだ。
子供のように…。
一度目は失敗した、二度目は天秤に掛けられている、三度目は手に入れようとしている。
いや。兄さんの態度を見たらわかる。
素直じゃないから分かりづらいけど、ビーネは愛を手に入れてるよ。
ボクもビーネが、ウィンリィが、兄さんが二度と悲しまないようにするから。