第16章 『再構築』 3
「で、いいかな。大佐。」
「あぁ、なにかね。少佐。」
そう切り出せば、軍人の距離に戻った。
「奴らは確実に迫ってきている。マルコーさんが失踪したのも、こちらの手を読んでの事だろう。一番に狙われるのは軍に所属していて、なおかつ居場所の特定しやすい大佐たちだ。」
「それについては疑問がある。我々は今病院にいる。ここでなら、死亡することがあっても不思議ではないのに、護衛が必要ないほどに何もない。」
「奴らも何か待っているとしか思えない。ただ、きっかけが無いからかもしれないが。なにぶん監査でも先が読めないみたいだった。すべての権限を僕に託し、自由に行動するようにと司令からお達しが出た。」
リザさんの姿が視界の端に映った。
しかし、彼女は僕らの雰囲気を見て、さりげなく人を遠ざけているだけで、近づいては来なかった。
「軍が国を食いつぶそうとしている。大量の人の命を吸って出来た賢者の石で人造人間を作ってな。友人や仲間までも奪った。」
焔の灯った瞳は強かった。
「ロイは、怖くないの?」
急に態度を戻した僕に、少し驚いた顔をする。
「怖いさ。だが、黙って流されるほど従順じゃない。守りたいものがあるなら、全力で挑め。ハニーにはそれができる力があるはずだ。」
僕には、力がある。か…。
ふ。とロイにほほ笑んで、僕は立ち上がった。
リザさんに目配せして、今まで影を潜めていたアレイを連れてこの場を後にした。
「副司令。お父様の所はいいのかい?」
「えぇ。病状も聞きたくありません。だから、家にも帰りません。」
「そりゃ、どうして…。」
「もう、逃げ道を作らないためです。」
「…は?」
外に出ればもう、暗くなっていた。
「アレイ。第三研究所へ向かってください。」
「……あいよ。」
何があったのか、この目で確かめたい。
僕はそこに着くまでに、渡されたファイルを何度も読み返した。
・・・