第2章 『出会い』 2
ヒューズが立ち止った一軒の家。
ここがマルコーさんの家らしい。
ノックをしたのはヒューズ。こういう〝訪問″には慣れているらしかった。
「ティム・マルコーさん。ヒューズです。いらっしゃいますか?」
中から音がしないので、ヒューズがもう一度声をかけた。
と、その時、突然戸が開いて銃を構えたマルコーさんが、こちらに向かって発砲して来た。
「うおっ!」
「わぁ!」
間一髪で避けたものの、初対面のましてや医者を訪ねて来たかもしれない人に向かって発砲するなんて…!
「ヒューズ…なにしに来た!」
「何って、お話しを…」
「私を連れ戻しに来たのか!」
いや、そう言うわけじゃ…。と引き気味のヒューズ。
銃口は俺たちの方ではなく、ヒューズの方に一直線に向かっている。
「もう、あそこには戻りたくない!おねがいだ!勘弁してくれ…」
「あの、ですから」
「口封じに殺しに来たか!」
「ちがっ」
「騙されんぞ!」
ダンッ!
「ちったぁ話しを聞いちゃくれませんかねぇ!マルコーさん!」
・・・・・・・。
「まず、イスに、座ってください。」
痺れを切らしたヒューズがマルコーさんへ足を一歩前に踏みならし、銃口が自分の方に押し当たるのも気にせずに怒鳴った。
人間、一瞬の衝撃にはどんなに頭に血が上っていても一瞬思考が止まるのだと目の前で検証された…。
「二人とも、中に入って。扉を閉めてくれるかい。」
ヒューズの言う通りに、なんとかアルも家に上がり、外の世界を遮断するために扉をしっかりと閉めた。
マルコーさんも落ち着きを取り戻し、一先ず全員リビングの椅子に座った。
「初めまして。ティム・マルコーさん。私はアメストリス軍部中央監査隊所属のビーネ・ヒューズ。あなたのおっしゃるヒューズは父、マース・ヒューズの事でしょう。」
「ビーネ…ヒューズ……。彼の息子か…すまなかったな。」
「いえ。」
早く話しを切りだしたいのは山々だったが、隣に座る彼の手が、密かに腰の拳銃に触れているのを見てぐっと抑えた。