第16章 『再構築』 3
廊下を歩いて行けば、待合室のようなところのベンチに、脇腹を押えて座っているロイがいた。
「傷。痛むか?」
「ハニー。…大したものじゃない。じき治る。」
同じ病院に父さんとロイとハボックさん。
大切な人を守りたいから軍人になったのに守りきれてないや。
ロイはきっと僕以上に無念さを抱いているに違いない。
「ハボックさん。一体どこを?」
「脊椎だ。」
脊椎…だとしたら、機械鎧も無理か。
機械鎧は中枢神経系に繋ぐ事は不可能であり、枝分かれした先、足や腕など末端の神経系のみならシグナルを受け取りきちんと動かすことが可能であるのだ。
中枢神経からの情報は多くて処理しきれないから。
「司令が、一連の情報をファイリングしてくれたんだ。まだ、読んでないけど、きっとロイ達がなぜそうなったかも書かれているはず。今、口頭で伝えたい事はあるか?」
不躾な、上官に対する言葉ではないと思うがいた仕方あるまい、事が機密すぎる。
「そうだな。気を抜くな。ってことぐらいだろう。」
「そりゃ、そうだ。」
父さんや二人の怪我の様子を見ていたら分かる。
変な脱力感に見舞われる。
「そっちはどうだ。もうマルコー氏は頼れんぞ。」
「マルコーさんのこと、思いつきもしなかった。いいのか悪いのか、失ったものは二度と取り戻せないってことだけは分かったよ。」
「……そうか。腕は戻らんか。」
「ただ、そこについては肉体や魂、精神に属するかが疑問なんだ。肉体には属するが、それに魂や精神があるのかってこと。試す事も出来ないし理論を組み立てることぐらいしか…。後はエドからの情報を待つよ。」
「エド?」
この話しの一番驚いたところがそこだったらしい。
僕的には、腕や神経系が取り戻せなくもないかもしれない。という超憶測なところに食いついてほしかったんだけど…。