第16章 『再構築』 3
では、ロイ達はそいつらと戦闘でもしたのだろうか。
あの焔の錬金術師がベッドに伏せるなんて、相当な実力の持ち主なのだろうか。
「クソ…気色悪い!俺、年内の休暇全部使っちまいました。もう自由に動けません。」
「手詰まりか…」
疑問は尽きない。
一度部屋に戻ることにした僕ら、ロイの病室は二人部屋でジャン・ハボックと同室であるようだった。
ハボックさんも怪我したのか?
「では、失礼します。」
病室の前には、見慣れた軍服に身を包んだ男と見たことのない年配の女性。
中を覗けばリザさんとベッドに上半身をおこしているハボックさん、彼が説明してくれた。
「俺の親と退役軍人局の人っすよ。」
「退……」
目で、二人の背中を追いつつも三人は中に入り、静かに扉を閉める。
「留置所襲撃犯捕獲の際の負傷で退役ってことになりました。」
「ちょっと待て!退役してどうするんだよ!」
「俺の実家は東部の田舎で雑貨屋をやってんだ。電話番くらいは出来るだろ。」
退役して、電話番…。
うろたえているブレダさんの様子から、ただ事ではない事はうかがえるし、けれど元気そうなハボックさんの様子から、命に別条はなさそうだという事は分かる。
「まだ治らんと決まった訳では……」
「自分がもう使えない人間だって分からないほど馬鹿じゃないっス。…動けない駒は、この軍にはいらない。」
彼らはロイの部下であって、僕の管轄じゃない。
首を突っ込むことじゃない……。
「諦めるのか。」
「この足でどうしろってんですか」
「しかし……!」
悔しそうに顔をゆがめるハボックさん。
…足が、動かないのか。
あぁ、それでブレダさんはマルコーさんを探しに行ったのか。
彼の医療に特化した錬金術で、失ったものを取り戻せるのではないかと…。
「…んて目してんだよ。」
ハボックさんは自分のベッドの脇に立っていたロイの胸ぐらを掴んで、自分の方へ引き寄せる。