第16章 『再構築』 3
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一旦家に戻っても良かったが、父さんの身体の事でまだ少し整理がついていないので、止めた。
監査には戻らず、直接ロイの所へ向かった。
「あ、ビーネ君?」
「あ、フュリーさん。元気そうでなによりです。」
「君こそ。大佐に用事?大佐なら病院だよ。」
「病院?」
計画していた作戦が失敗したのだろうか。
おおっぴらに聞く事も出来ず、フュリーさんに礼を言って一先ず監査へ足を向けた。
「ただ今戻りましたー。」
いつものようにデスクルームに顔を出すと、仕事をしていたみんなが一斉にこちらを向く。
「やぁ、おかえりビーネ。良い旅だったかい?」
「はい。エクリアさんこそ、管理職板について来てるじゃないですか。僕の席譲りましょうか?」
「仮っていうのがいいのさ!」
にこやかな仲間達のデスクやホワイトボードには、何かの事件と思われる遺体の写真。それと見たことのある容疑者の写真。
その横の方に、何処かの研究所と思しき場所の写真と戦闘のあった形跡が取られた写真。
「随分長い出張だったな。ビーネ少佐。」
「う。ぁ、ヴィンズ司令…お久しぶりです。」
「こちらの仕事をほっぽり出して、良い御身分だな。」
ご立腹の司令様。
かつかつと憤った態度でこちらに向かってくると、一冊のファイルを渡された。
「罰だ。ビーネには最も危険な任を負ってもらう。」
「え?」
「今、この国を揺るがしている、賢者の石にかかわる一連の事件。お前に一任する。『人を作るべからず』軍の規定に反するものはお前の判断で牢にぶち込んで構わない。」
「……はいっ!」
人体錬成をした者は容赦なく捕まえる。
しかし、今回の賢者の石騒動は、それを実行した者が関わっている。
ここのみんなが僕の事をどれだけ調べ上げているのかは知らない。
けれど、黙認して僕を泳がせているのなら、この期待に答えるべきだ。
「これ以上、この国を犠牲にはしたくない。この事件を追えば、自ずと中将の夢も叶うはずだ。」
「ですね。」
ファイルをトランクに仕舞って、久しぶりの再会もここまで。
脱ぐひまもなかったコートを正して気合を入れ直す。
「じゃぁ、僕は焔の所に行ってきます。」
「おう。送るぜ副司令。」
「ありがとう。頼みます。」