第16章 『再構築』 3
リゼンブールの駅から中央に向けて、列車に揺られている。
「ビーネ。」
「ん?」
「何であんなこと言ったんだよ。」
「エドワードがずっと僕といてくれたら嬉しいからね。」
…………何だこいつ。
「どういう意味じゃコラ。」
「僕、恋愛とかしたことなかったけど。人を好きになるってこういう事でしょ?相手の事をなんでも知りたいとか、色んな表情を見てたいとか。」
「はぁ?!」
本気で言ってんのか?
おいおいおいおいおいおいっ!
フツーは女の子にそういう事思ったりするんじゃねぇのかよ!!!
「誰かを好きになることに理由はいらない。ってロイが言ってたよ。」
「大佐かっ!お前に変な常識植えこんだ奴は!何で男に興味持つんだよ!」
「エドはちっちゃくて」
「誰がミジンコ豆粒ドちびかぁぁぁああっ!!!!」
「そりゃ、エドでしょ。」
ニコニコと窓の桟にほお杖をついて俺の方を見るビーネの顔は、晴れやかだった。
そんな奴の笑顔を見ていて、心がすっと落ち着くのは……
うぁあ!!!考えたくもないっ!
「エドワード。」
「なんだよっ!」
「僕はロイに用がある。エドはどうするんだ?」
「あー…まず、アルにこのことを話してからだな。」
「何か気になることがあったら僕にも教えて欲しい。急ぎであれば、僕の名前あてで、軍の奴に親書で渡せばすぐ届くから。」
「あぁ。わかった。じゃ。」
「じゃぁ、気を付けて。」
騒がしい中央の駅に降り立つと、急に大人びた顔になるビーネ。
チョコレート色のコートを翻して雑踏の中へ消えて行った。
「よし。行くか。」
呟きは雑音の中に消え、アルとウィンリィの待つホテルへと向けて歩きだした。