第16章 『再構築』 3
「なに、考えてたんだ?」
掠れた声が聞こえ、顔をあげればビーネが目を開けていた。
「べ、別に何も考えちゃねーよ!」
「あっそ。」
そーだよ!
ベッドに上半身を起こしたビーネは、打ちつけた後頭部が痛んだのかさすっていた。
「突き飛ばして悪かったな。大丈夫か?」
「タンコブにはなったけど、平気だ。僕の方こそごめん。取りみだした。」
泥がついたので拭くだけ拭いた髪が絡まったのか手櫛でほどきながら、話だす。
「僕は仲間の血肉でこの身体を取り戻したのか?」
「いや。」
「じゃぁ。人体錬成では死んだ人間は作ることが絶対にできないという事?」
「そうなる。」
これはあくまで俺の推測にすぎない。
でも、間違った理論ではない。
ビーネはしばらく悩んだ後、少しの確信と疑問を持って口を開いた
「僕の経験談からでは正解は導けない。アルの魂はどこから引っ張ってきた?」
こちらを向いたビーネのまなざしは錬金術師のそれだった。
「扉の中からだと思う。」
「生きた人間が通行料として取られた場合。ここではアルフォンスだ。その身体はどうなる?」
「常識から言えば、わからない。もしくは死んだと仮定するだろう。」
「しかし、アルフォンスは実際に動き、理解し、話す。そして記憶もある。鎧に脳は無い。ならばどこに記憶が送られる?声が発せられる?」
「身体が何処かにあるから…。」
さすがはビーネ。
アルフォンスを通行料として死んだ人間と仮定すると、つじつまが合わないことに気がついた。
ビーネの場合。
人体錬成をした時、その場で通行料として取られたのは自分の身体。
しかし、それを取り戻そうともう一度扉を開いて払った通行料は仲間全員だ。
「アルの鎧に刻まれた血印。あれはただの繋がりを示すものなのか?」
「あぁ、俺もそう考えてる。だから、アルの身体は今も扉の中にあって、生きている。もう一度扉を開けて何らかの通行料を払えばアルフォンスは取り戻せる。」
「だとすれば、僕の身体は僕自身のものであって、仲間達は扉の中で生きている可能性もなくは無いという事か?」
「あぁ、でもあくまで仮説だけどな。」
「仮説でもいい。生きているかもしれないと希望をくれたんだ。」
あ、笑った。