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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第16章 『再構築』   3



キッチンから声が聞こえてくる。

「あんなボンクラでも父親にゃ変わりないだろ。帰ってきた晩に、長いことお前たちの面倒見てくれてすまないって頭下げられたよ。親として、何もしてやれないって。」
「け!親をやる気がねェだけだろ!」

静まったリビングにビーネの苦しそうな寝息が響く。
部屋を見回せば、写真が一枚無くなっていることに気がついた。
俺達の、俺達が家族4人で写っている写真が。

「…会ったらな。一発殴った後に伝えといてやるよ。」

キッチンから戻った、ばっちゃんは氷枕を持っていた。

「エド。ビーネを部屋に連れてってやりな。ここじゃ狭いだろうから。」
「あ、あぁ。」

脱力しきったビーネを二階に移動させ、うなされている奴の頭の下に氷枕をタオルにくるんで敷いてやった。
すぐにでも中央に戻ってアルフォンスにこのことを伝えたい。
でもきっと、アルにこっぴどく怒られるだろう。

「でも、必要だったんだ…。」

俺の小さな呟きに答える人はいない。
目の前で苦しそうにうなされているビーネもまだ、目を覚まさない。
額に浮かぶ汗、苦痛にゆがんだ顔、荒い息。
いつもの柔和なビーネからは考えられない、あの時の行動。
ヒューズ中佐やグレイシアさんがどれだけ大切に、細く今にも切れそうな糸のようなビーネの心を守ってきたのか実感した。
俺に、こいつを守ることは出来ないんだろうか…。

「……俺、何考えてんだよ。」

傷一つつけないように大切に、なんて男に抱く感情じゃねーだろ!
何なんだよコイツ。



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