第16章 『再構築』 3
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まさか、あいつがあそこまで混乱するとは思ってなかった。
いつも沈着冷静で考えてから動くような奴が、考えることすらできなくなるなんて。
短剣を握ったあいつが次にする行動なんて誰が見てもわかった。
慌ててビーネの腕に飛びかかり、その手から短剣を奪った。
ただ、その拍子に思い切り転がって、ビーネが地面に頭を打ち付けた。
「ばっちゃん。ビーネ、起きたか?」
「いいや。眠ってる。」
アルフォンスの身体は取り戻せる。
もしかしたら、ビーネの仲間達も。
今、そのための確認に師匠へ電話をしてきた。
切られちまったけど。
リビングのソファーでうなされているビーネ。
「この子は一体どうしたんだい。あんなに取り乱して。」
「こいつも、俺と同じなんだ。でも、俺より失ったものが大きかった。」
「…何があったかは聞かんよ。この子も色々あるだろう。」
ばっちゃんの入れてくれた紅茶で一息つきながら、クセルクセス遺跡であったイシュヴァール人から聞いた話をした。
「そうかい。息子達は戦地でよくやっとったんだね。親として誇りに思うよ。どんな死に際だったか、聞いていないかい?」
「……いや、聞いていない。」
「…そうかい。」
助けたイシュヴァール人に殺されたなんて言えるはずもなく、視線を寝ているビーネに向けた。
「あいつ、ホーエンハイムはどこに行くって言ってた?」
「さぁね、何も聞いてない。」
「…のヤロー!言うだけ言ってバックれかよ!ぶん殴ってやろうと思ってたのに!」
「あ!忘れとった!」
突然大きな声を出したばっちゃんにびくっ!と肩を揺らした。
「あいつに会う事があったら伝えとくれ。」
「何を?」
「トリシャの遺言。……約束守れなくて、ごめんなさい。と伝えて欲しいと言っていた。」
「約束?なんの?」
さぁ。と言ってばっちゃんは空のカップを下げる。
「確かに伝えたよ。ホーエンハイムによろしくね。」
「なんで俺が!」