第16章 『再構築』 3
エドの手が震えている。
僕はピナコさんに渡されていたシャベルで、指定された個所をゆっくりと掘り下げて行く。
閉じ込めていた人体錬成の時の記憶が、扉の中の記憶が少しずつ開かれていく気がした。
地面が深くなっていくごとに、段々と身体が無くなっていく感覚に囚われた。
「いけない、降ってきちまったよ。急がないと……エド!?」
ピナコさんの声で我に返った。
名前を呼ばれたエドワードは地面にうずくまり、かはっ。と嘔吐している。
そんなエドワードを見て、僕は何もできなかった。
「胃が……ねじ切れそうだ…。」
「当たり前だよ!おまえにとっちゃ最大のトラウマだ!…もうやめよう、お前が壊れちまう!」
エドは顔を上げず、うわごとのように言葉を続ける。
「確認しないと、前へ進めないだろ。錬金術師は真理を追い求める者だ。自分に都合のいいところだけ見て、それで済まされて良い訳がない。」
苦しそうにしながらも、口元を拭い、足を叱咤し立ち上がる。
「逃げて…たまるか!」
僕には、なぜエドワードがもう一度墓を掘り返そうと思ったのか。
何度も嘔吐しながら、ここを掘り続ける理由がわからなかった。
ようやく、この場に埋められていた物に突き当たった。
エドワードは震える手で、残っていた髪の毛を掴み、水のたまったバケツで洗い流して言った。
「ばっちゃん…母さんの髪は栗色だった…。」
エドワードの手を覗きこめば、数本の黒い髪の毛。
「黒だ…!」
ピナコさんが僕に大腿骨を取ってくれと言うので、それと思われるモノを渡す。
「大腿骨の長さから生前の大体の身長がわかる。骨盤を見れば性別も判明する。」
「ばっちゃん…」
「あぁ。これにトリシャの特徴は見当たらない。これは、お前の母親ではない。」
え?