第16章 『再構築』 3
エドワードがピナコさんに機械鎧を見てもらっている時。
僕はテーブルを借りて、手帳を開いていた。
書き殴られた文字、折れ曲がった報告書、部下からの軍のリーク。
中身は目を通していない紙もある。
「面倒だなぁ。」
必要そうな物だけピックアップして、手帳の新しいページに書き込んで行く。
ダイアリーの部分は既に真っ黒。
自分の予定なんてさしてないのに、他人の予定ばかり書き込んであって読みにくい。
そうだ。ロイ達は無事に計画を実行できたのだろうか。
人造人間を捕えて吐かせる。
聞こえは簡単だが、実際行動に移すとなると相当のリスクがあるだろう。
それの開始予定の日はとっくに過ぎている。
戻った時、良い報告が聞けると良い。
「ビーネ。」
「ん?」
「お前も来てくれないか?」
「うん。」
エドに声を掛けられ、広げていた紙たちをまた無造作に手帳に挟みこむ。
シャベルやバケツなどを手に持ったエドとピナコさん。
農作業でもしに行くのだろうか。
そろそろ雨が降りそうなのに。
雨の雰囲気を感じ取った動物達は、そそくさと家路についている。
「家の裏だよ。」
二人についてやってきたのは、燃やされ倒壊したエルリック家。
裏手に回って、ピナコさんがその一角を指さした。
「たしか…この辺だ。ここにあれを埋葬した。」
埋葬。
……エドとアルの母親か?
ようやく合点がいった僕は慌ててエドワードを確認した。
今更墓を掘り返してどうするつもりだ。と。
ただ、眉を寄せ苦しそうにその場を見つめるエドワード。
錬成した母親を掘り返してもう一度拝むなど、恐怖や罪悪感の大きさは計り知れないだろう。
「やめるかい?」
「……いや、手足の付け根が痛む。天気が変わりそうだから、早く済ませよう。」