第15章 『再構築』 2
「父親にズケズケ言いたいこと言えるの、羨ましいなって。僕は、許されなかったからさ。」
憧れ。
「エドワードになれたら良かったのにな。」
「……俺なんかなるもんじゃねェよ。」
でも、恋慕に近いモノ。
「そうだ、エド。エドの話、聞かせてよ。」
知りたかった。
エドワードが何を考え、何を感じて、今ここにいるのか。
事実だけは知っている。
人体錬成、鎧の弟、義手義足の兄、機械鎧技師の幼馴染、最年少国家錬金術師。
でも、その過程で彼が何を思って生きてきたのかを聞きたくなった。
「長くなっても知らないからな。」
「いいよ。時間はたっぷりある。」
傾聴した。
何かの物語のように。
悲しかった事、嬉しかった事、単なる感想やその時の気持ち。
明け透けな思春期の思い出。
詳細にかたられる恐怖。
まるで、錬金術のように僕はエドワードを理解し、分解し、再構築した。
「これが。エドワード・エルリック。」
「そーだよ。文句あっか?」
「いや。ねぇよ。」
欲は満たされた。
静かな夕食後、僕らは早々にベッドに入った。
僕はエドほど緊張しているわけじゃないから、旅の疲れもあって、朝、ピナコさんの声が聞こえるまでぐっすりだった。
寝ぼけ眼で、エドワード君の方を見やると、夢見が悪かったのだろうか
「まだ寝てんのかい!?親父さんが出ちまうよ!」
ホーエンハイムさん、か…
お世話になったわけじゃないが、夕食を共にしたんだ、見送りぐらいするか。
「エドワード?」
寝癖を整えて部屋から出ようとしたが、エドワードが一向に動かない。
振り返って声をかけて見れば、難しい顔をしたままベッドに腰を掛けたままだ。
「とりあえず、ピナコさん呼んでるから行こう。」
促せば、渋々腰をあげてブーツに足を突っ込み一緒に階段を下りた。
「君、そう言えば名前を聞いてなかったね。」
玄関を出ると、すぐにホーエンハイムさんの視線に掴まった。
「俺はヴァン・ホーエンハイム。エドワードの父親だ。」
「ビーネ・ヒューズです。」
「エドワードと仲良くしてやってくれ。」
「はい。」
軽く言葉を交わして、ホーエンハイムさんは街へ消えて行った。
その背を見送るエドワードは、僕には何を考えているのかわからなかった。
・・・