第15章 『再構築』 2
彼のその言葉は僕にも突き刺さった。
彼らから数歩ほど離れているが、エドワードのように彼の視線にさらされている気分になった。
「…―――ちがう!」
「寝小便した子供がシーツを隠すのと一緒だ。」
親が子を叱るように、厳しく。
…エド。
「逃げたな、エドワード。」
「てめぇに何がわかるっ!!」
エドワードの横顔が。
怯えてるようにも、怒っているようにも、泣いているようにも見えた。
「わかるさ。」
「…てめぇと喋ってると胸糞悪くなってくる!」
グッ。と八つ当たりするように地面を踏んで、僕の方へと踵を返した。
「墓参りに来たんじゃないのか?」
「こんな荒んだ気分で、できるか!付いてくんな!」
「ピナコん家に帰るんだろ?俺もそっちなんだから、しょうがないだろ…う?」
ホーエンハイムさんの視線がようやく僕を捕える。
どうも。と会釈を返す。
その間にもエドワードは僕の方へ戻ってきて、相手にするな。と言わんばかりに腕を引っ張る。
「彼女か?」
「……。」
挨拶でもした方がいいのかと思いつつも、舗装されていない道をぐいぐい引っ張られて歩くのは危険。
仕方なく、エドワードについて歩くことに集中する。
「髪、伸ばしてるのか。」
砂漠から戻ってきて、砂を払う為に纏めていただけの彼の髪を見てホーエンハイムさんが少し嬉しそうに言う。
「お揃いだ。」
僕の腕を掴んでいる手に力が入る。
すると、彼は髪をほどき素早くみつあみに結い直していた。
「………俺の若いころにそっくりだ」
きっと、ホーエンハイムさんの言葉はエドには聞こえていないだろう。
けれど、僕にはどうしたらいいのかなんてわからない。
ただただ、エドに引っ張られて行くだけだった。