第2章 『出会い』 2
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突然俺たちの警護をすると言って乗り込んで来たビーネ・ヒューズ。
彼の父親も見送りに来て、終始笑顔の出発となった。
「警護って、スカーの襲撃からの警護だろ?お前だって錬金術師じゃ?」
「僕が錬金術師だって知ってる人の方が少ないよ。」
人には見せないようにしてるからね。と〝錬金術は大衆のために″という言葉を知らないのかのように言ってのけたヒューズ。
コイツにも何かしらの理由があるんだろう。
「でも、お前。あんまり強そうじゃねぇけど…?」
「兄さん。失礼だよ。」
アルは仮にでも足を治してもらったからなのか、ヒューズの肩を持つ。
「はは、いざとなったら身体を張るよ。」
にこやかに笑う様子からじゃ、こいつがどの程度強いのかなんて想像できなかった。
そのうえ、「今からどこに行くの?」と呑気に聞いて来た。
「リゼンブール。俺の腕を治してくれる整備士がいるんだ。」
「へぇ。どんな所?」
何の意図もない興味本位なんだろうけど、何処か俺たちの過去を探られている質問な気がして何処か落ち着かない。
動揺を悟られまいとして、俺は車窓を流れる景色へと視線を移す。
「…本当静かな所でさ、何も無いけど都会には無いものがいっぱいある。それがオレ達兄弟の故郷リゼンブール。」
「故郷、か。つかの間の里帰りと言うわけだ。」
隣に気に入らない奴が座っていたとしても、日ごろの疲れと適度な揺れで眠気が襲ってくる。
いくつか目の駅で停車し、うたたねから目を覚まして人の流れを見ていると、突然ヒューズが窓の外を見て、あ。と声をあげた。
「ん…?なんだ?」
「いや、昔研究所の錬金術師をしていた人が居たんだ。今は行方不明になっている人。」
追いかけて捕まえるのかと思ったが、ヒューズは席を立つ事は無く、くたびれた背中でホームを歩いて行く彼を目で追っているだけだった。