第2章 『出会い』 2
僕の頭をぐしゃぐしゃとかきまわす父さん。
血の繋がりこそないがマースは誰が何と言おうと僕の父親だ。
「時間が出来たら母さんにも連絡してやれ。」
「もちろん。」
ようやく町に朝の活気がやってくる。
窓の外では子供たちがはしゃいでいるのが窺える。
「ハニー。危険だと思ったら」
「〝錬金術を使え″でしょ?使わなくて済むように、父さんから短剣を教わったんだ。」
そうだが…。と口を閉じる父さん。
「あの大罪から逃げる気はないよ。ただ、あの兄弟が捜している物の答えを僕知ってしまっている気がするから、迷ってるんだ。彼らの前でこの僕が錬金術を使うことに…。」
「元の身体に戻る方法…か。俺は錬金術師じゃないからお前の考えている事がわからないが、お前もまだ子供なんだ。俺らを頼ることを忘れるなよ。」
「…ありがとう、父さん。」
駅に着くと、そろそろ列車の出るころ合いで僕が乗るにはまだ少し余裕があった。
「エドワード君、アルフォンス君。」
「…ヒューズ!」
「近頃何かと物騒だから、僕が君たちの護衛に付く事になったんだ。よろしくね。」
有無を言わさずエドワード君の横にドサリと腰を降ろす。
その時ちょうど、発車のベルが鳴り響いた。
「二人とも。」
僕の指さす方に二人がぐるりと視線を向ける。
「ヒューズ中佐!」
「よっ!司令部の奴ら忙しくて来れないってよ。代わりに俺が見送りだ」
父さんがホームまで見送りに来てくれた。
「そうそうロイから伝言をあずかって来た」
「大佐から?」
「『事後処理が面倒だから私の管轄内で死ぬ事は許さん』以上」
「『了解。絶対てめーより先に死にませんクソ大佐』って伝えといて」
「あっはっはっ!憎まれっ子世にはばかるってな!おめーもロイの野郎も長生きすんぜ!」
がははは!と笑う様子に思わずこちらも笑顔になる。
「っと、ハニー。お前も身体に気をつけろよ。何かあったらすぐに父さんに連絡するんだぞ。それから…」
「父さん。僕は大丈夫。母さんとエリシアの事頼むよ。」
「任せとけ。じゃ!道中気をつけてな。エド、中央に寄る事があったら声かけろや。」
車輪が軋み、列車が動きだす。
徐々に離れて行く父さんは笑顔で僕らに敬礼する。
エドワード君は敬礼を返したが、僕は笑顔で手を振った。