第15章 『再構築』 2
シャン様はビーネの肩を掴み、懐かしむように、そして疑念を持って奴の顔を覗きこんでいる。
ビーネの顔は晴れない。
「父は亡くなりました。仲間も不慮の事故で…僕だけが生き残りました。」
「なんと…他に生き残った者はおらんのか?」
「いません。」
彼の言う不慮の事故。
自分が引き起こした人体錬成の事だろう。
…辛いだろうな。
「もう、ジプシーは水に還りました。地を廻り水の加護を与えることは無いでしょう。伝えたい事は言いました。もう、僕はジプシーじゃないのです。」
「お、おぉ…なんと言う事じゃ。水の申し子よ…」
「その名で呼ばないでください。僕はただの人ですから。」
奴はそう言うと、俺の腕を引いてみんなの元へと踵を返した。
泣いてるのかと思うぐらい俯き、肩を震わせていた。
俺達はすぐに馬に乗り、来た道をまんま引き返し始めた。
先頭には仕事を終え気の抜けた、大人達。
俺とビーネは乗馬を楽しみながら、ついて行く。
……楽しんでるのは俺だけか。
「おい、ビーネ。遅れてるぞ。」
「あぁ。」
暴れ馬に乗っているはずなのに、馬は奴の気持ちを汲んでか、少し足取りが重そうだ。
慣れない手つきで手綱を引っ張り、奴の馬へ近付く。
さっきは離れていて見えなかったが、ビーネは泣いていた。
「砂漠で迷子になっちまうぞ。」
「…駄目だな。もう、戻れねェよ。」
「戻るんだよ。お前、ヒューズ中佐治すんだろ。」
ずずっ。と鼻をすするビーネ。