第15章 『再構築』 2
軍と言う言葉が出てきた以上、俺には判断できない。
ビーネに視線を移すと少し驚いた表情をしていた。
「こんなガキんちょ人質に取ったくらいじゃ、アメストリス軍がどうこうするとは思えないけど?」
「世論は変えられるかもしれん。子供たちを見殺しにしたアメストリス軍、と名。イシュヴァール内乱も、引き金は一人の子供の死だった。なにが歴史を変えるきっかけになるか分からんのだよ。」
これ以上踏み込むなら交戦も辞さない。と言った風に男達を睨みつけるビーネ。
と、気がつけば大勢のイシュヴァール人に囲まれており、その中から老婆とそれに付き添う男の子が前に進み出て来た。
「やめんか見苦しい。」
「シャン様…!」
「馬鹿者が。イシュヴァラの名を辱める気か。」
交戦体制を解いたイシュヴァール人の男達。
俺達は相手を刺激しないように、黙って立ちつくした。
「すまんね。若い者達が無礼を働いて。」
シャン様。と呼ばれた老婆の問いかけにビーネが口を開かなかったので、仕方なく俺が対応した。
「いや、イシュヴァール人が俺達を憎んでるのはよく知ってる。」
「あぁ。我々のすべてを奪い、この荒野へ追いやったお前たちを許すことは出来ない。」
言ってることがちぐはぐ?
「じゃぁ、何で助けたんだよ。その大嫌いな俺達をよ。」
「すべてのアメストリス人が悪い奴ではないことをしっとるからじゃよ。奴らに、命を助けられたことがある。」
「へぇ…」
すると、横にいた男の子が前に出た。
目に着くのは肩にある大きな傷跡。
「シャン様も僕もあの内乱で死にそうな怪我をした時に、アメストリスの医者に助けられた。」
「医者?」
「イシュヴァールがあんなになってしまって正直君達が憎いけど、今僕が生きていられるのもその医者のおかげだ。全てを憎む事はできない。」
葛藤した表情。
俺より小さいのに…。
「俺の知ってる医者夫婦も、内乱の時イシュヴァールに行ってたよ」
「医者夫婦…って、ひょっとしてロックベル先生か!?」
「えっ、知ってんのか!?」
「知ってるも何も、僕達を助けてくれたその先生だ!『私達には君くらいの年の娘がいるんだ』って、親身にみてくれたよ。ずっとお礼を言いたかった!」
驚いた。
自分を助けてくれた医者の知り合いが目の前にいる。それを知った男の子は嬉しそうに笑った。