第14章 『再構築』
「でも…こうしていると、賢者の石とか無関係よね私。なんで巻き込まれなきゃならないのよ……」
ロス少尉の呟きはもっともだ。
「本当に二人を襲っては無いんだろうな。」
「当たり前でしょう!」
ブレダさんが過ぎたことを蒸し返すように再度ロスさんに聞いた。
「…そうか。よかったよ、こいつを使うことにならなくて。」
「え?」
「万が一ロス少尉が犯人だったら、情報を聞き出した後に撃ち殺すよう大佐から命じられていた。」
そういうブレダさんの手には拳銃。
握る手が震えていないのは覚悟の現れだろう。
固まった空気を押し隠すように、僕はブレダさんの手の拳銃をやんわりと地面に押しつけた。
「それはないですよ、ブレダさん。僕もこの目で見てるんですから、ロスさんの姿をした何者かが錬金術で血痕を偽った。」
「ヒューズ少佐もあの場に…?」
「うん。公にはしてないけど、追い払ったのは僕だ。当然僕はロスさんを擁護するよ。」
この場で刃を抜けば、容赦はしない。と牽制をする。
「でも、この場にいるロスさんがあの時のロスさんだとすれば、監査七つ道具でメッタ殺しにしてるね。絶対。」
にっこりと全員に向かって笑いかける。
「……ビーネは上司も父親もだもんな。」
エドの小さな呟きで、みんなの肩が沈む。
「エドワード。今更止まれって言うのは無理難題だよ。母さんは僕のケツに火を付けた。君が止まっても僕は突き進む。この先、また誰かが傷つくようなら、僕は全力で守って見せる。」
ブレダさんと少佐がうんうん。と強く頷き返してくれた。
「…俺は、俺には二人で元の身体に戻ろうと約束した弟がいる。同じ目的のために動いてくれる、大切な仲間がいる。…なら、前に進むしかないじゃないか。もう、誰ひとり犠牲にならない方法で、目の前で誰かが犠牲になりそうになったら、俺が守る!」
ぐっと拳を握りしめる様からは固い決意が伝わってくる。
「この手で守れるものなんて、自分の身一つで精いっぱいなのに、さらに他のものまで守ろうだなんてただの傲慢かもしれない…身の程知らずと言われようとも、今の俺にはこれしか思いつかない。」
熱く語るエドワード。
やっぱり彼は僕とは違う。