第2章 『出会い』 2
事件の翌日、早朝から蜂の巣をつついた騒ぎの東方司令部。
中央勤務の僕と父さん、少佐の三人はロイに邪魔者扱いだ。
僕はとにかく事の次第を中将に伝えるために、通信室にお邪魔した。
「中将。ヒューズです。」
『おぉ。ヒューズ。東方のバカ騒ぎはわしの耳まで届いている。』
災難だったなぁ。がははは。と笑う中将はまだまだくたばりそうにもない。
「こちらでは力になれそうもありませんし、焔の錬金術師の護衛も必要なさそうです。」
『ガキ大将か。接触のあった鋼の錬金術師はどうであった、ん?』
「紙面通りと言う感じではありませんでした。まさに〝鋼″を冠するのに相応しい少年です。今はスカーとの戦闘で腕を破壊されまったく使い物にはなりませんが。」
『ほぅ。では治療……整備と言った方が正しいか?鋼に警護は?』
「その件はマスタング大佐が判断されるかと。」
『どうせ、戻ってきても部下共の訓練だ。鋼の護衛にはお前が付け。綴命の処理はヴィンズにやらせる。じゃぁな!』
ガシャン!
と軽快な音を立てて切れた通信。
反論する暇もなく切られた電話は虚しくツー、ツーとなっているだけだった。
「あ、あの~。ヒューズ少佐?切れてますけど…」
切れた受話器を耳に当てたままの僕に、フュリーさんがおずおずと声をかけて来た。
「あ、うん。」
受話器を彼に戻して、先ほどの事を伝えるべくロイの元へ向かう。
開けっぱなしのロイの部屋を覗くと、彼はちょうど受話器を置いたところだった。
「ロイ。」
「ちょうどいいところに来た。ハニー、君が鋼のの警護を頼まれた。」
何と根回しの早い事。
「中将に。でしょ?」
「そうだ。頼めるな?」
「あー……はい。」
じゃ、早速。
とロイに伝言を託され、部屋でくつろいでいた父さんと共にさっさと部屋から追い出されてしまった。
「「あー……メンド。」」
兄弟の所へ向かう車内、父さんとため息も被る。
「この時間なら、駅だって言ってたな。」
「ぎりぎりで乗り込めなかったらどれだけ楽か…。」
「今から30分後の発じゃ、ちょうど着いちまう感じだなぁ」
多くない自分の荷物はトランクの中、大切な家族の写真は私服の内ポケットに大事にしまった。
「またしばらく、家には戻ってこれなさそうだな。」
「あーぁ。母さんの飯が食いたいな。」
「はっはっは!そうだな!」