第14章 『再構築』
どれくらいこうしていたのだろう。
「あ~…腹減ったなぁ。」
エドワード君の小さな呟きが聞こえてようやく我に返った。
ずび。と鼻をすすって顔をあげた。
「今、何時くらい?」
「え?あぁ。昼、過ぎてるな。」
目、腫れてるだろうか。
みっともないところを見られて少々恥ずかしくもあったが、清々しかった。
「飯、食いに行くか。旨いとこ知ってるけど。」
「……そんな顔でか?」
やっぱひどいか。
父さんの枕元にあったタオルを水でぬらし、顔を拭いたら幾分かましになった。
それなら大丈夫だろう。とエドワード君にお墨付きをもらい、フーバーにはここでの事は口外するな。ときつく灸をすえ病院を出た。
「なぁ、ビーネ。」
「なに?」
「いや、なんでもねぇ。」
変なエドワード君。とは、言わなかった。
だって、そんなこと言ったら…何処かの少女漫画みたいだから。
男二人で飯屋に入れば、昼過ぎなので人は少なかった。
「今日のおすすめ、二つで。」
「え、俺選んでねぇよ!」
「女々しいなぁ。いいんだよ、お任せで。」
席に着くなり、店員さんを呼び注文する。
メニューを開こうとしていたエドワード君は驚いて、僕を睨みつける。
「僕のおごりだからね。好きにするよ。」
「テメーには優しさってもんが足りねぇんだよ。」
「へぇ、エドワード君は優しくしてほしかったんだ。」
「そーいう意味じゃねェよ!」
ちょっとからかって見れば、やっぱり面白い反応が返ってくる。
けらけらと笑っていると、エドワード君がムスッとした顔のまま話しかけてきた。
「エドでいいぞ。」
「え?」
「よそよそしいから、君とか付けられたら。」
…………。
「まさか。アルに嫉妬?」
「……。」
沈黙は肯定ととるぞエドワード君。
わははは!と笑っていると厚切りの大きなベーコンをパンに挟んだサンドウィッチが出てきた。
かぶりつきながら、クスクスとこみ上げてくる笑いを噛み殺す。
「お前、仕事か?トランク持って。」
「うん。そう、大事なね。」
「…行かなくていいのか?」
「大丈夫。遂行中だから。」
遂行中?と首をかしげるエド。
まだ、内容を話すわけにはいかない。