第1章 『出会い』
「アル。大丈夫かっ」
「兄さんの馬鹿っ!死んじゃったらどうするんだよ!」
心配したエドワード君をよそに怒鳴るアルフォンス君。
しかし、そのアルフォンス君の鎧は右半身をすべて壊されていた。
そしてその中身は……
「噂は本当だったんだね。エルリック兄弟。」
僕の冷たい口調に二人は固まる。
「人体錬成と言う禁忌を犯し、エドワード君は手足を一本づつ。アルフォンス君は魂以外をすべて。」
「は、剥奪!」
突然エドワード君がそう叫んだ。
「権利剥奪なんかしないよ。君らが今すぐに害になるとは思えないからね。この事実を上に報告する気もない。秘密は握っていてこそ価値があるものだから。」
険しくなるエドワード君の顔。
アルフォンス君もこころなしか少し棘のある視線を寄こしてくる。
「そして、僕ができるのはこのくらいだ。」
ゆっくりとアルフォンス君に近づき、警戒するエドワード君を無視して、ポケットから錬成陣を書いた紙を取り出し、瓦礫の中から飛び出ている鉄骨に置いた。両手の指先で優しく陣に触れ、アルフォンス君をかろうじて歩けるように鉄くずで補修した。
「お、お前も…」
「国家錬金術師。」
「!」
「これ以上は話したくない。アルフォンス君を助けたとこも黙っておいてくれるかい。」
聞きたい事が沢山!といった顔のエドワード君を無視して、アルフォンス君に
後は布で隠して。と、そこらにあった布っきれを肩から腰の部分まで覆い隠すように縛り付けた。
「ありがとな。」
「…いや。」
広場に戻れば事態はかなり収集していて、僕らを待っていた父さんたちが無事そうなエルリック兄弟を見て安堵していた。
・・・