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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第13章 『分解』   6



有無を言わせない強い言葉。
グレイシアさんはお茶を入れて来るわ。と席を立つ。

「僕の本名はビーネ・ジプシー。旅の一族ジプシーのリーダーの一人息子。母の記憶は無い。父は勇敢で聡明で、何より僕の才能を憎んでいた。」

奴は取り乱してなんかいなかった。

「父は僕が錬金術の腕を磨けば磨くほど、冷たくなった。幼い僕はそれをまだ足りないんだと受け取った。父に認めてもらいたい一心でさらに腕を磨いた。」

突然の父の死。
幼心で、父を生き還すほどの高度な錬金術で認めさせようとした。
でも、それは禁忌の術であり、結果として体の半分以上を失う。
不慮の再度の錬成で、仲間全員を対価に体を取り戻す。

「荒野を一人で何カ月もさまよった。その時視察に来ていた軍人たちが僕を捕まえた。それからロイに引き取られ、生活した。ここら辺はよく覚えてないんだけど、いつの間にかマース・ヒューズに引き取られ、男の一人暮らしに付き合わされた。」
「その時の事なら、覚えてるわよ。独身だって言っていたのに、子供を連れて歩いていたお父さんを見て驚いたわ。」
「そう、だったね。初めてみた母さんはものすごく怒ってた。」

和やかに会話をする様子は親子そのもの。
複雑な親子関係であるにもかかわらず、ここまで仲がいいのはやはり、ヒューズ中佐の人柄のおかげなのだろうか。

「それからは、エドワード君と変わらない。自分の力を持って、大切なものを守りたい、だから国家錬金術師になった。監査に入ってからはエイドス中将に世話になった。錬金術以外の事もたくさん教えてもらった、体術、武術、話術、その他もろもろ。」

そう話すこいつが最初からエリートではなかったことがうかがえる。
同い年の癖に、少佐。
国家錬金術師にはそれくらいの地位はある。
しかし、それを15歳という異例の年齢でやりこなしているのは、その陰に努力があったからなんだ。

「そして、君たちに出会い。事件が起き。僕は父の身体を取り戻すために、賢者の石を、それに近い情報を集めたい。願いは二人と一緒なんだ。」

沈黙が降りた。
あれほど毛嫌いしていたこいつが、俺たちと同じものを目指していることを知れば、途端に近く感じてしまう。



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