第13章 『分解』 6
自分たちの部屋に戻ろうと、ポケットから鍵を取り出し、差し込もうと扉に手を掛けると、思わぬことに扉が開いた。
「あ。やべ、俺鍵かけないで出てった。」
「あ!何も取られてないよね?」
慌てて部屋に入り、辺りを見回す。
俺たちの荷物はある、しかし、無くなっていたものが一つ。
「無い。」
「え?」
「新聞が無い…!馬鹿か俺は!」
ソファに腰を降ろし、なぜ昨夜飛び出して行ったかの理由を雄弁に語るものをそのままにして言ったことを後悔する。
その時、コンコン。と控えめなノック。
「ウィンリィ!」
「わっ!?」
「あ……。」
ノックしたのはウィンリィではなく、ホテルマン。
俺たちが留守の間に、電話が来たのでそのメモを渡しに来た。とのことだった。
「兄さん?」
「あぁ、ウィンリィがヒューズさんの家にいるんだって。迎えに来てあげてって。」
「誰から?」
「グレイシアさん。ヒューズ中佐の奥さん。」
急いで身なりを整え、出掛ける準備をする。
「行くの?」
「あぁ。行って、きちんと話してくる。」
「ボクも行く。」
「罵られるのは、俺一人で十分だよ。」
「兄さん一人の問題じゃない。ボク達二人の問題だから。ボクも行かなきゃいけない。」
奴だってわかってるはずだ。
父親が襲われたのは、俺が賢者の石の事を相談したりしたからだ。
あいつにもちゃんと謝らなきゃいけない。
「なぁ、アル。もしも…」
「うん。ボクは他の人が犠牲になるくらいなら、元の身体に戻らなくていい。どんなことがあっても元の身体に戻るって決めたけど、ボクのせいで傷ついてしまう人がいるというなら、そんな身体はいらないよ。」
アルの言葉に頷いた。
ヒューズ宅に到着して、グレイシアさんに中に入れてもらうと、リビングのソファーに座るウィンリィがいた。