第13章 『分解』 6
「副司令。お迎えに上がりました。」
やりきれない空気を吹き飛ばすように朗々と響いた、かしこまった声。
「夜が明けます。監査は蜂の巣をつついた忙しさです。」
遠回しに、仕事しろよ。と言っているんだ。
…辛く、ないのかな。
「エクリア…。僕を家に、支度をする。それと、彼らを宿へ。少佐はご自分で?」
「吾輩の事はお構いなく。」
奴の部下の登場でいつもの雰囲気が戻ってきた。
エクリアと呼ばれた高身長の女の人は、俺とアル、それから奴を車に乗せ、まず、俺たちの宿へと向かった。
「ねぇ、ビーネ。焼死体はどうだった?キモかった?」
「エクリアの趣味よりはキモくなかった。それより、本当に場所わかってるんですか?」
「大丈夫大丈夫!ね、ここ真っ直ぐでしょ?」
……なぁ、アル。
俺、ちょっとでもこの人をカッコイイと思ってしまった事、神に懺悔するよ。
「はい。そうです。なんだかすみません。」
「いいのいいのー。ねー、ビーネ。」
「あー、うん。」
きゃっきゃと騒ぐエクリアさん。
隣の助手席では徹夜だったからなのか、眠たそうな奴の顔。
この二人のテンションの差についていけない。
「じゃ!まったねー!」
「「ありがとうございました。」」
ばびゅーん。と急な加速で去っていく車を見送る。
……。
「アル。俺、あんな人初めて見た。」
「ボクもだよ。兄さん。」
宿に戻って、何があったかをウィンリィに話す為、彼女の部屋をノックするが何の返事もなかった。
「ウィンリィ?出掛けてるのか?」
「帰ってくるの、待とうか。」
朝食、には早いが、小腹がすいたのなら出掛けていてもおかしくは無い時間か。