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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第13章 『分解』   6



「なんせ損傷がひどくてな。生前焼けか死後焼けかの区別もつかん。」
「では、本人ではないという可能性も…!」

ロス少尉はアームストロング少佐の部下、だったっけ。

「いや、かろうじて残された歯の治療痕からマリア・ロスと断定した。ひでえもんだ。こんな別嬪さんを炭クズのボロクソになるまで焼いちまいやがって。よほどの恨みでもあるんだろうな。」

医者は表情を変えず黙ってイスに座り、鑑定書を眺めている大佐に視線を向ける。

「もう少し上手く焼いたらどうだ。こっちの身にもなって見ろや。」
「久しぶりだったからな。加減がわからん。」
「イシュヴァール戦の英雄と若大将が、身内の敵とはいえ、小娘相手にここまでやるたぁ、ヘドがでるね。」

医者は呆れたように踵を返しこの場を後にしていった。
それを見て、アームストロング少佐が奴の前に一歩出る。

「このたびは吾輩の部下がとんだ事を…」
「……少佐。」
「ロス少尉が殺人などを犯すとは思っておりませんでした。彼女は正直者で真面目で、思いやりのある…思いやりのっ…」

少佐は崩れるように後ろのイスに座り込んだ。
くっ。と様々な思いがこみ上げて来る少佐に、大佐がその肩に手を掛ける。

「少し休暇を取ったらどうかね少佐。ん?そうだな…私がいた東部、あそこはいいぞ。都会の喧騒もないし…何より、美人が多い。」

大佐はそう言い残してこの場を去っていく。
俺は…俺は。
やりきれない思いと、何もできない子供な自分。
苛立ちを抑えきれず、周りや物に当たってしまうのがいい例だ。

「少佐。」

おもむろに口を開いたのは、上司を殺され父親が襲われた、奴。
嫌に冷静で通る声。
俺と同じく人体錬成をして真理を見た。

「僕は…」

同い年で、国家錬金術師で、軍人で…

「誰を憎めばいいのでしょう。」

でも

「…苦しい、です。」

俺より、大人。

「ヒューズ少佐…」


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