第13章 『分解』 6
重くなる罪の意識。
償っても償いきれない罪悪感。
「…ごめん。」
「謝ったって、もう戻ってこねーんだよ。」
「ごめん。」
「君、天才錬金術師だろ。なんとかしてくれよ。」
「ごめん。」
「返せよっ!」
初めてみるこいつの激昂する姿。
がむしゃらに怒りをぶつけられる。
「僕の幸せを返せよっ!」
奴の声に、アルフォンスはぎゅうと体を縮ませる。
仲の良かった二人。だからこそ余計に心が痛む。
「ごめん、ビーネ。ごめん!ごめん、ごめん、ごめん!」
「…アル……。」
呪文のようにごめんと言い続けるアル。
奴は俯いていて、俺より少し長い淡い金髪に隠れていて見えない。
あ、今日は結んでないんだな。
「ヒューズ少佐。エルリック兄弟。」
「あ、アームストロング少佐。」
震えることしかできないこの空気を裂くように、アームストロング少佐が現れた。
大佐が来たので移動しようとのことだった。
先頭を歩く少佐、その後ろに続く奴。
いつの間にか軍人の顔に戻っていた。
待合室に着くと大佐もいた。
イスに座るとアームストロング少佐が、襟を正して俺たちに向きなおった。
「ヒューズ中佐の事を伝えなかったのは、本当にすまなかった。」
「賢者の石にかかわり過ぎたから襲われた。…俺の所為だ。」
「おぬしのせいではない!思いつめてはいかん!」
「俺が巻き込んだんだ…っ!」
俺の所為だ。
無関係だった奴を巻き込んだのも俺だ。
あいつの幸せを奪ったのも、ヒューズ中佐の家族の幸せを奪ったのも俺だ。
「お揃いか?」
そう、声が聞こえ顔をあげると。待合室とつながる両開きの扉から白衣を着た医者が出てきた。