第13章 『分解』 6
「大佐。彼らは僕が。ここはお任せしても?」
「あぁ。頼むヒューズ少佐。」
「はい。」
俺たちじゃ、何もできなかった。
大人たちと形式的な会話を交わす奴は酷く大人びて見えた。
「二人とも、これから聴取を受けてもらうよ。」
冷静に周りに指示を出す声が、脳に留まることなく抜けて行く。
「副司令。お呼びですか?」
「ヴィンズ、きっと遺体は検死に掛けられる。一番近い中央病院に手配してあると、マスタング大佐に伝えてくれ。アリス、手近な憲兵を呼んで彼らに簡単な聴取を。終わったら僕らを病院へ輸送してくれるかい?」
「「はい。」」
見たもの聞いたものを憲兵に聞かれるままに答える。
それが終われば、奴の案内で病院に移動した。
誰も口を開かない車内。
助手席に座っている奴は、今までに見たこともない不機嫌そうな顔をして、流れる景色を見つめている。
病院に着けば、まだ大佐たちが到着していないということで、ここが何処かも解らない廊下で、俺とアルフォンス、それから奴の三人で待たされた。
「ビーネ。ヒューズさんは?」
「父さんなら未だに昏睡状態だよ。それ以外は命に別条はない。」
アルフォンスが決意したように、そう質問をぶつけた。
「エイドス中将って、ビーネの上司だよね?」
「……そうだね。」
身近な人が二人も襲われた、しかも俺たちの護衛をしてくれていたロス少尉に。
それなのにこいつは、そんなことを放って休暇を取り、俺たちに合流した。
俺の捜している物に興味があるからと言って。
「俺の所為か…。『賢者の石』にかかわる事柄を、中佐は調べていたからそんなことになったのか?探るために俺たちと一緒に行動したのか?」
俺の質問に、俺たちが座るベンチの横で壁にもたれて立つ軍服姿の奴は静かに息を吸って
「YES。」
とだけ答えた。